4-8

ピコん。

ん?四人のトークルームに通知が来る。


晴香『リモートお見舞いやるから、夜は時間空けといてねん』

智也『何時がいいとか何時はダメとか教えて〜』



まだ学校のはずなのに…。

ていうか、え?強制?…まあいっか。

リモートかぁ。その手があったか。



奏美『いつでも大丈夫だよー』



どうせなるべく早く帰ると言ったって、

絶対に七時は過ぎちゃうだろうから。

だって、そこまで遅くには掛けてこないだろう。

せいぜい八時九時くらいだと思う。



「んーっ、もう二時かぁ」



スマホ触ってたら、なんだかんだ一時間以上経っていた。


夜ご飯どうしようかな。昨日は何にしたんだっけ…。

さすがに学校休んでおいて、買い物に行くのはなぁ。

誰かに会っちゃったら一発アウトだし。

家にあるもので何か作れるかな…。



「あっ!これ残ってた!」



おととい、オムライスを作ろうと思って買った具材がまだ半分以上あった。

少なくはなるけど、なんとか二人分は作れるかな。

あーよかった、オムライスにしようとヤケ買いしておいて。



「将にいにLINEしとこっ」



『今日の夜ご飯はオムライスね!』

素早く打って右向きの矢印をタップした。


一時間後、グループに返信が来る。



晴香『じゃあ、六時くらいに掛けるね〜』

奏美『わかった〜ありがとう』



六時なら全然大丈夫だ。

将にいも帰ってこないだろうし、ちょうどご飯を作りながら話せる。



「ドラマでも一本観ようかな」



実はかなりのテレビっ子だ。

今は動画配信サイトや音楽のサブスクが充実しているけど、

やはりテレビ画面で観る作品や番組も面白いものが沢山ある。

もちろんネットで見ることもあるけど、

今どきにしてはテレビをよく見る方ではあると思う。


何にしようかな…。

一昨年のドラマでオタクになるほどハマった作品がある。

いつも恋愛ものはあまり観ないんだけど、

こればっかりは観てしまったが為にドハマりしている。

今もファン同士、SNSで交流が続けられている。


もう沢山観すぎて、脳内再生は余裕だけど

ひとたび画面を付けてしまうとあっという間に時間が過ぎる。

そこで私は、あえて最終話を観ることにした。



「うぅ…ああーっ」



将にいは部屋に入れないようにして普段観ているけど、

毎度毎度うめき声が漏れては心配される。

でも号泣必須の最終回だし、最後はもう口元が緩みすぎて…。



「ふへへ…あはっ、ふふっ」



見終わってから、余韻が凄すぎて、しばらく動けなかった。

ああ、続きが見たい…。これは誰しもが思うことではある。

でもあえてここで終わるからこそ、作品に厚みが出るとも思う。

この後のストーリーを妄想…いや想像するだけで、幸せな気分になる。


だけど不意に、違うことが頭の中に浮かんできた。


このドラマは、主人公と相手がすれ違いまくるお話。

二人とも女性で、惹かれ合うがその分葛藤に葛藤を重ねていく。

しかし最後は、よその目なんて気にしていられないほど想いが強くなり、

自分の本当の気持ちを伝え合い、結ばれる。

さまざまな壁を乗り越え、未来の苦労も共にすると誓い合う二人に、

視聴者は釘付けになり、必死で応援した。

まるで本当に二人が今もどこかで暮らしているように思えて、

放送が終わって二年が経つのに、今でも思いを馳せている。


このときは、綺麗な他人事だと思っていた。

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