3-9

「はあ…

どうしよう……」


「奏美?どうした?」




土曜の夜───



「眠れないのはね、将にいのせいだよ」

「…えっ」


「将にいのことが、頭の中でグルグルぐるぐるして、落ち着かない」

「それって、、どういう、、、」

「分かんない、分かんないけど、とにかく将にいが気になって仕方ないの」

「気になる…か」



モゾモゾっと将にいが動いた。

と、次の瞬間…



「ひゃっ!?」


「…もっと気になって仕方なくさせてあげる」



敷布団の上で、いわゆる"床ドン"状態になっていた。

これは一体…、何の夢なんだろうか……。



「しょ、将にい…?」

「……」



このあと何をされるんだろう。

そんなドキドキ感だけがあって、動けないし声も出せなかった。


見たことの無い表情の将にいだったが、



「なーんちって」

「へ…?」

「冗談冗談!早く寝よ!」

「ちょっ、え?」

「なに、期待した?」

「そ、そんなことっ」

「まーそうだよなぁ、兄妹だし」

「うん…」

「じゃ、おやすみー」

「おやすみ、なさい…」





こんなこと、智也に言えるはずもない。

『兄に床ドンされた』というところだけフィーチャーされて、

勝手な解釈や推理を繰り広げられたら、個人的には傷口に塩だ。



「ったく…何か悩んでるなら言えよー」

「ありがとう…」

「あと、俯いて悩んでる時の奏美もかわいいぞ」

「誰にでも褒めるのやめとき」

「誰にでもじゃないもんっ、奏美だけだもんっ」

「へえ〜ほんとかな〜?」

「ごめんなさい!!佳月のことも褒めますっ!」

「あははっ、そっちかいっ……ああ…」

「えっ?」



そういえば…佳月。今日は珍しく学校を休んでいた。

体調不良らしいけど、いつもなら連絡くれるはずなんだよね…。

私に知らせてないのはさておき、智也も聞いてないなんて、本当に何かあったんだろうか。



「佳月、心配だね」

「俺にくらいは連絡したっていいのにな」

「放課後、お見舞い行く?迷惑かな」

「あのお母さんのことだから、喜ぶとは思うけど…」

「けど?」

「いや、佳月にとっては余計なお世話なのかな…って」

「うーん、そうだよね…」

「あと俺、今日に限って放課後ヒマじゃないんだよね」

「えーっ、タイミング悪すぎー」

「ごめんっ、行くなら奏美が……」

「ん?」



後ろで恨めしそうにこっちを見ている晴香。

いかにも、私も連れて行け、という顔をしている。

というか、もう顔に書いてある。



「奏美と、晴香で行けばいいよ、なっ」

「そ、そうね!」

「やった〜!!」



私としても、晴香に、晴香じゃなくても誰か、一緒にいてほしい。

きっと二人きりじゃ、すごく気まずいから…。



「朝のHRやるぞー」



顔が素直に前を向いてくれなかったのは、言うまでもない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る