3-4
一番を弾き終えると、将にいは何か黄昏れるように遠くを見つめた。
それからすぐ、何事も無かったかのように音楽室を後にした。
「知らなかったなぁ…」
「この前たまたま音楽室の近く通ったら、誰かがピアノ弾いててさ、誰かと思って覗いたら先生だったんだよね」
「ピアノ弾けたんだ…」
本当に将にいは不器用で、料理はできないし、洗濯物を畳むのは最近ようやくマシになってきたけど、掃除は相変わらず半端だし。
そんな将にいが、将にいが、ピアノを弾いている…。
なんだかもう可笑しくなってきてしまって、佳月が居るのなんてお構い無しに一人笑っていた。
「どうしたんだよ、そんなに笑って」
「なんか可笑しくって、あははっ」
「…まるでずっと前から知っていた人の意外な一面を見たって感じだな」
「え?」
やっぱり、とでも言いたげな表情の佳月。
しまった…!私もしかして、やらかした?
「えっ、いやっ、その、前から知ってるわけじゃあ無いけどそのー、ふ、普通に意外だなーって…あはは〜」
「誤魔化すなよ」
「別に誤魔化してなんか…」
やばい。バレた。何をやってるんだ私は。
ずんずん佳月が迫ってくる。
その顔はなんだか、さっきとは違ってて…。
「好きなんだろ、あの担任のこと」
「…は?」
「苗字同じで、イケメンで、授業も上手くて、奏美だけ名前呼びされて、ぶっ倒れても真っ先に駆け付けてくれて、そりゃ好きになっちゃうよな…」
「えーと、佳月?さっきから何言って…」
「俺なんか、告白するときになって避けてばっかで、冷たいこと言っちゃって、勉強教えてもらっても全然できないし」
「そ、そんなことない!」
「でも、アイツがいいんだろ」
「そういうことじゃ…」
「最近の奏美、なんか変だと思ってたんだよ」
「変って?」
「アイツが居ると、いつもの奏美じゃないっていうか…、後ろめたい感じが伝わるっていうか」
この人はエスパーなのかしら。
バレてないのが不思議なくらいだ。
でもむしろ、そうやって思われる方が自然なのかもしれない。
誰が私たちを兄妹だなんて思うだろう。
「佳月は、誰にでも同じように接することができて、好きなことはとことん極めて、そばにいる人を誰よりも大切にしてる… 自分のことそうやって卑下しないでよ」
「じゃあ、俺じゃダメなの?」
真っ直ぐに私を見つめる。
吸い込まれてしまいそうな瞳に思わず息を呑む。
「どういう意味…?」
「そのまんまだよ」
その目がゆっくり近づいて、細く長い指が私の顎を少し持ち上げた。
私、キスされちゃうんだ…。
そう悟った瞬間、これで解放されるような気がした。
何の抵抗もせず宙を見つめていると
佳月はひと息飲み込んでから、さらに顔を近づける。
あと少し。もうあと一センチもない。ああ…。
ガラッ
「「!?」」
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
こんなタイミングで作者です。
突然ですがクイズです。じゃらん。
将にいが弾いていたのは、一体何の曲でしょうか?
物語で具体的に出てくることはありませんが、一応設定があります。
考えてみてください!
(ヒント1:今も人気のロックバンドの曲です)
ヒントはこの後も出していきます。正解はどこかで!
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