2-10
「奏美っ」
「あ、佳月、ごめん」
「俺こそごめん、具合悪いのに」
「迎えに来てくれたの?」
「うん、ちょうど保健室に行こうと」
階段を上がろうとしたら、佳月に遭遇。
「いま誰も居ないし、ここじゃダメ?」
ダメじゃないけどダメ、みたいな顔をしている。
「ダメじゃな「あ、大丈夫!屋上行こ!」えっ」
「もう体調バッチリだし、風当たりに行きたいし」
「そっか…ありがとう、じゃあ行こう」
グゥ…
「あっ…」
「佳月、ご飯食べてないの?」
「迎えに行くことしか頭に無かった」
「お弁当持っていこう」
「だな」
屋上には誰もいない。私たち二人だけ。
お弁当を食べるのはもちろん、そもそも何故か立ち入り禁止になっているからだ。
でもここで、ご飯を食べる、私たち。
「なんか、いけない事するのって楽しいよね」
「バレたらどうする?」
「逃げる」
「単純〜」
穏やかな風の中で、お弁当を食べる。
すごく気持ちがいい。ずっとやってみたかった。
「奏美ってさ、すっげえ美味しそうに食べるよね」
「そう?今日はとりわけ美味しいよ」
「えっ」
「誰も居ない天気のいい屋上で食べるの、憧れだったから」
「青春映画か何かみたいじゃん」
「いいでしょー、たまには青春したって」
そう、青春。アオハル。私にはまるで縁のない話。
今このひと時だけでも、充分。
「はー美味しかった」
「すっかり良くなったんだな、体調」
「おかげさまで」
「よかった」
「そういえば、何の話があるの?」
「えっ?」
「だって、屋上に来てって、話があるからじゃないの?…もしかして、本当に屋上弁当が目的?」
だとしたら、ゲーム少年の佳月にも、かわいい一面があるもんだ。
そんな返答を期待していた。
パラペットに手をかけて、高い景色を眺めていた。
その両手の外側に、手が置かれた。すぐ後ろに気配を感じて振り向く。
「えっ……佳月…?」
それはとてもとても近い距離で。
佳月のいい香りがすぐそばに来た。
こんなに背、高かったっけ…。
いつもと全く違う表情で、しっかり視線を捕えられる。
「俺、奏美が好きだ」
強い風が、周りの景色をかき消した。
───────第2話 fin──
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