2-7

「「「おはようございまーす」」」

「おっ、おはよう」



爽やかなお出迎えは河野先生。



「そういえば智也、今日は朝練無いの?」

「今日は丸一日オフ〜」

「そっか、やったじゃん」

「だからさ〜デート行こ〜」

「えっ、なんで」

「そんな嫌そうな顔しないでよ〜」

「おい、奏美が体調良くないの知ってんだろ」

「知ってるけどさ〜」

「良くないってほどじゃ…」

「でも万全じゃないんだったら無理すんなよ」

「うん…」

「あー!佳月クンったら嫉妬しちゃって〜ムキになんなよ〜」

「そういうことで言ってんじゃねーの」

「あーもう些細なことで喧嘩しないでよー」



コホッコホッ



「あー、先生おはよー」

「おう、おはようコホッ」

「もしかして冴島先生も風邪?」

「ああ、まあね」

「ふーん」



佳月は色々と鋭いから要注意ね!

と、アイコンタクト。伝われっ!!


将にいが眉をぴくぴくっと動かした。

どうやら伝わったみたい。たぶん。



「とりあえず奏美は、体育休んだ方がいいよ」

「うん、そうする、ありがとね」

「うん」



なに照れてんだよーと智也がちょっかいを出してるけど、今日はいつにも増して動じない佳月。

変だな。何かあったのかしら。



「んじゃー職員会議行ってくる〜」

「行ってらっしゃーい」

「ほーい」



また送り出して、自分はテキストを広げた。





「ええ!三時間目の体育出るの!?」

「うん、なんか大丈夫そうだし」

「ダメだよ、佳月がダメって言うんだからダメ!」

「でも学期初めの授業だし…」


一時間目が終わったあと、黙っているのも何だか気が引けて、とりあえずノリが軽い智也に話した。


「どーせ体力テストなんだしいいじゃん!」

「でも放課後やるのは…」

「だからダメだって」

「うん…」



正直、放課後残るのは困る。

夜ご飯の支度とか洗濯とかあるし、自分のやることもある。

体力テストくらいなら何時間も残されるわけじゃないけど、なるべくなら早く帰りたい。

もう咳も治まってきたし、大丈夫だとは思うんだけど…。ダメかな。



「どっちみち見学も着替えないとだから、ね」

「ああ、そっか」

「先生に伝えてこないと」

「俺行くよ」

「あっ佳月」

「えー俺が行くー!」

「やだ」

「ちょっ…」



突然やって来て、そのまま行っちゃった…。



「なんか今日あいつ変だよな」

「やっぱり智也もそう思う?」

「うん…不機嫌とはまた違うんだけど」

「何かあったのかなってずっと考えてるんだけど…」

「いいなー」

「ええっ?」

「奏美にずっと考えてもらえるなんて…」

「そっちかい」

「冗談じゃないからな?」

「えっ…」


「……なんちって〜」

「何よもうっ」



智也のこういう冗談には慣れている。

だけど、今のは何故かどきっとした。



「佳月!ありがとう、伝えに行ってくれて」

「どういたしまして」



怒ってるわけでもないと思うんだけど…。どうしたんだろう。

もしかして、私が何かしたとか!?

んーでも思い当たること無いしなあ。


そんなことを考えながら二時間目を終えた。

全く集中できなかった。



「奏美、着替えに行こ」

「あ、晴香、ごめん先行ってて」

「わかった〜」



一応ジャージ持っていこう。

あーもうこんな底の方にいっちゃった…。



「んーっ」

「奏美」

「…ん?あ、佳月!?」

「あのさ、昼休み、時間ある?」

「え、あ、あるけど…」

「じゃあ昼飯食べてからでいいから、屋上来て」

「わかった…」



やっぱり私、何か怒らせちゃったのかな…。

不安ながら更衣室へ向かった。

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