2-3
「じゃあねー!また明日!」
「うん、ばいばーい」
あれから、なんとなくあっという間だったなあ。
あー、帰りたくない。
「かーなーみっ」
「ふぇっ?」
ジャケットの後ろ襟を摘まれる。
「なーに帰ろうとしてんだよ」
「智也」
「奏美が俺に連絡したんじゃん、忘れんなよー」
「ええ?……あっ」
いけない。すっかり忘れてた。
学級委員会だった…。
「行くぞー」
「ふえーい」
学級委員会が行われる教室に行って、私は再び驚愕することとなった。
「しーつれいしまーす」
「失礼しま…す……?んっ?」
「おっ、来た来た〜」
「ええーっ!」
「えー!…って何が?」
な、ん、で!
冴島せ・ん・せ・いが!
学級委員顧問なの!?!?!
「よろしく〜奏美さんっ」
「…お願いします」
「先生だったんだ〜」
「教えてくれればよかったのに…」
「ごめんごめん」
にこにこしながら謝られても…。
なに?わざとなの?わざと買って出てるの??何なの?
顧問は幸いにも二人。
もうひとりは私も智也も馴染みのある先生だった。そう…
「河野先生も教えてくれれば良かったのに…」
「僕が誘ったんだー、顧問やってみないか?って」
「前の学校ではやったこと無かったから」
これも将にいが夢を叶えるためのプロセスに過ぎない。
それに将にいは、私を支えるためにも花榎に来たと言ってたし。
頑張れ私…。慣れるんだ!慣れてしまえばむしろ仕事もしやすい…!
「はいじゃあ、全員集まったので始めるよー」
どうやら指揮は河野先生が取るらしい。将にいは副顧問ポジか。
「ひと足早く学級委員に集まってもらったのは、六月に行われる文化祭について仕事があるからです」
花榎高校では、六月の最初の土日に文化祭が行われる。
生徒会と文化祭実行委員会が全体の運営を行い、
学級委員は文実委員と共にクラス展示の運営指揮を担う。
去年も学級委員で、結構大変だったんだよなあ。
もうやりたくないと思っていたのに…。
「なあ奏美、次は何する?」
「智也はいいよね…」
「え?何が?」
「はあ…なんでもない」
「なんだよ、教えてくれたっていいじゃーん」
この呑気さに引っ張られて、私も気楽にやれればいいんだけど。
文化祭って一年で最初の行事だから、そこで結構クラスでの立ち位置決まっちゃうんだよね。
また目の敵にされなきゃいいんだけど…。
(実際、女子たちが奏美を学級委員に推薦したのも、奏美を良く思わないが故の"押し付け"であることに、奏美自身はとっくに気がついていた)
「えーっと、とりあえず今の段階ではこういう感じになります」
「「はーい」」
「これからも先ほど伝えた日程で委員会を開くので、忘れずに出席してくださーい」
「はあ、終わった終わった〜」
「帰ろー」
「あ、奏美」
「ん?」
「このあとまた佳月ん家に行くとか無いよな?」
「無いよ今日は、なんで?」
「…嫌だから」
「は?」
「二人っきりで遊ぶとか、まじ嫌だから」
「えっ、ちょっと」
そのまま部活へダッシュしてしまって
教室を出たところで、私ひとり取り残されてしまった。
「かーなみっ」
「ええっ!なに!」
「そんなに驚かないでよ、もう他の人いないし」
「か、河野先生が…」
「いや知ってるし」
「え、あ、そっか」
「去年も学級委員だったんでしょ?」
「うん、だから?」
「分からないことあったら聞くかもしんないから、よろしくっ」
「そんなの僕に聞いてもいいじゃない」
「先輩は何となく頼りないから嫌ですー」
「「ひどっ」」
「ねえ将に…冴島先生?」
「ん?」
「学校でこうやって喋ってると、誰かに聞かれたり危ないから、やめといた方がいいんじゃない?」
「あーそれは…」
「うん、大丈夫!」
「え、なんで河野先生がそんな自信満々に…?」
「ま、まあ、俺も気をつけるよ、うん」
「じゃあこのあと会議だから、ばいばーい」
「え、あ、さよならー、、」
颯爽と二人は階段の方へ去ってしまった。
私もひとり、反対方向へ歩き始める。
靴を履き替え、校門をくぐり、改札へ近づく。
『俺も気をつけるよ』って…。
何が何でも隠さなきゃいけないことを
そんな簡単に気をつけるって言っていいの?
危機感無さすぎじゃない??
思わず手が勝手に、ICカードを改札機に叩きつけた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます