1-5

「それでは、先生方は舞台にお並びください」


「わあー楽しみ!」

「そんなにワクワクすることかなぁ…」

「するの!」

「佳月が好きなんじゃないの?」

「だからっ!イケメンはただの目の保養!目薬!!」

「じゃあイケメン執事雇えばいいじゃん」

「…それ名案だわ」

「気づくの遅!」


どうでもいい話をして、改めて前に向き直る。

まあこの先生たちが担任になることは無いだろうから、とりあえず顔と名前を……。


「あれ」

「ん?奏美、どうかした?」

「えっ、ああううん、なんでも、ない…」


あんなに似てる人、居るんだねえ。世界は狭いな。


「それでは生徒から左側の先生より自己紹介をお願いします」

「はい、今年度より花榎高等学校に赴任しました……」


ホントに似てる人なの?髪型まで一緒ってどゆこと?

いや、待て待て。髪型が一緒だから似て見えるってパターンもある。


「ねえねえ、いちばん右のあの先生、イケメンじゃないっ?」

「そ、そうかなぁ」


言われてみれば…って違う違う。

確かに将にい、よくイケメンだって言われるけど…。


「あっ!最後だよ!あの人喋る!」

「う、うん」


「Hello! Nice to meet you!」


あっ…。これはいかん。

絶対、そうだ。間違いない。


「えーこの度、花榎高校にしてきました!冴島将太と申します」


転校、がウケたのか、どっと笑いに包まれる。


「皆さんお分かりの通り、僕の担当教科は英語になりますので、気軽に質問とか来て欲しいなと思います!よろしくお願いします」


いちばん大きな拍手で体育館がいっぱいになった。

晴香は嬉しそうに、固まる私に話しかけてくる。


「あの先生うちのクラスの英語やってくれないかな??」


お断りです。


「部活の顧問とかやるのかなっ?」


やるならサッカー。


「どこに住んでるのかなー?うちの近くかなっ?」


ごめん、晴香の家とは近くないんだ。


「好きな食べ物何かなっ?お弁当あ〜んとかしたいぃ!」

「ウインナー」

「へっ?」

「えっ、いや……そそ、そういうのは佳月にすることでしょーがっ」

「だって佳月くん私の事好きじゃないんでしょ?」

「それで簡単に諦めるの?芦野晴香の名が廃るわ!」

「なにそれっ」

「ていうか、お弁当あーんとか少女漫画の読みすぎ〜」


ああ、危ない…。悟られるところだった。

いやまあ、晴香なら大丈夫か。


なんで居るの?新しい学校って、花榎だから言えなかったの?

え、なに?サプライズのつもりなの??

なんだかよく分からないグチャグチャな気持ちだ。

びっくりしたし、どうすればいいか分からないし、聞きたいこと沢山あるしで、勝手に涙が出てくる。


私は、どうすればいいんだ…?

河野先生助けて…!

振り向くと、ニヤニヤしてちょうど私と目が合った。

もしや…知ってたな?このーっ!


あと、我が親友、晴香よ。

将にいアホみたいに鈍感だから、君の意図にはきっと気づかないぞ。

それどころか、素直に喜んで

「ありがとう〜」とか言って口開くんだよ。

ウインナー、ソーセージ、その辺の類なら尚のこと。

おやつは決まって魚肉ソーセージだから、あの人。


「静かに!しーずーかーにっ!」


先生がいい加減お怒りだ。

いけめん教師で騒ぐ生徒たちを、号令係の先生が叱責。


「はい…それでは最後に、各クラスの担任発表に移ります」


まあでも、さすがに担任になるなんて事は無いでしょう。


「それでは二年一組から発表します

 二年一組、担任は…
















 冴島将太先生!」


わー!!きゃーー!!!

うちのクラスの女子による黄色い悲鳴が、脳天を突き刺す。


「…はあ?」


「奏美!担任だってよ!!きゃーっ!」

「そ、そうだねぇ」

「…奏美?どうしたの?大丈夫?」

「え、あっうん、大丈夫」


誰か…。今日の出来事は、全て夢だと言ってください……。

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