1-2

あ、ここで降りるんだった。

閉まるギリギリ、ホームへ出た。


「おっ、おはよー」

「ああ、おはよ」


ホームで遭遇したのは、同級生で友達の三本みつもと智也ともや

簡単に説明すると、イケメン。そしてサッカー部。モテるために生まれてきたんかって感じ。

去年も同じクラスで、仲がいい、と私は思っている。


「あれ?佳月かづきと一緒じゃないの?」

「うん、寝坊したらしいから置いてきた」

「ええ珍しい、佳月が寝坊なんて」

「雪でも降んじゃない?」

「なにそれ」


こういう時に嫌なのが、周りの視線。

ここらじゃ智也(と佳月)は有名人だから、特に同じ高校の女子からの視線が痛すぎる。

別に付き合ってるわけじゃないからぁぁあ!!!

そんな目で見ないでくれよーーぉー!

って線路に向かって叫びたい(なぜ線路)。


「あ、電話。…佳月だ」

「ねぼすけ太郎どうしたんだろな」


「もしもーし」

「智也に何回掛けても出ねーんだよ」


いきなりそれかいな。


「そりゃあ電車乗ってたからね」

「え、一緒だったの?」

「同じ電車で、さっきホームで会った」


ピッ

改札を出る。


「それで今、一緒に…「奏美と朝デートだけど何かぁ?」はっ?」

「朝デート?ふざけんな本人同意か!?」


いやそこじゃなくない?


「もちろーん、手繋いで行くもんね」

「ちょっ電話返してっ」

「とにかく、ねぼすけ太郎さんはゆーっくり来てくださーい」

「あ、電車来たから切るわ」

「え、ちょっと佳月!?」


ツーっ、ツーっ…


「…切られた」

「はい、お返しくださーい」

「じゃあ手」

「嫌です」

「真顔で拒否んないでよ」

「じゃあとびっきりの笑顔で言ってあげようか?」

「もっと怖そうだから大丈夫です」


誰にだって、そういう思わせぶりなことするんでしょ?知ってる知ってる。その手には乗らないもんね。

こういう感じだから、学校ではモテモテ。去年のバレンタイン何個貰ってたっけな。多すぎて食べるの手伝った気がする。


「え、それで結局フッたの?」

「うん、別に好きじゃないし」

「そんなに何回もアタックされて、ちょっとは意識するんじゃないの男子も」

「俺は違うの、たぶん佳月も」

「何かにつけて佳月出てくるよね」

「うるせっ」


何言ってんだか。結局、佳月のこと大好きな癖に。

智也と佳月は家が近くて、小さい頃から遊んでいた幼馴染らしい。


私は、小さい時のことはよく覚えていない。

記憶があるのは、小一の運動会がぼんやりとだけ。それより前は、スパッと切り落とされたように覚えていない。ただハッキリ言えるのは、その頃から将にいと二人暮らしだったということだ。

将にい曰く、母は私を産んだ直後に亡くなっているらしい。病気ながら出産し、そのまま息を引き取ったそうだと言っていた。父は海外赴任中らしいけど、なぜか会ったことは無い。


「「おはようございまーす」」

「あ、奏美ちゃんおはよう〜」

「河野先生、おはようございます」

「なーに?三本くんとデート?」

「ちがいま…っ」

「そーですよ?」

「ちょっと!」

「ええ〜そうなの?」

「違いますよ!…いつまで冗談かますのよっ」

「他に好きな人いるの?」

「は?」

「俺じゃなかったの…?」

「あのね、その妄想もうるうるお目目も違うところで活かしてください」

「ふぇーい」

「あ、クラスあそこに貼り出してあるからね」

「ありがとうございまーす」


今年も一組。よかった。この高校では、一組から成績順になっている。

そしてまたも、智也と佳月、そして親友の晴香と同じクラス。


「なんか、ずっと一緒だね」

「ずっとも何も、まだ二年目じゃん」

「いや、佳月の話」

「ああ、んね、よかったじゃん」

「別にぃ?」


それ絶対うれしいよね?嘘つくの下手過ぎよね。


「お、噂をすればって感じじゃない?」

「ん?」


河野先生がそう言うから振り向くと、五十メートル世界最速で走ってきたみたいな顔して肩を上下に苦しそうな佳月がいた。


「遅いぞー」

「でも凄いね、めっちゃ速いじゃん」

「あの電話のあと電車乗って、走ってきた」

「そんなに俺に会いたかったのかー?」

「むしろもうしばらく会わなくていい」

「ひっど」

「奏美に会いたかったから」

「へ?」


さらりと爆弾投下してくるこの田宮たみや佳月かづきも、校内では有名なイケメンらしい。智也と二人揃って、女子からは様付けされてるらしい。私と晴香は無論、呼び捨てだけど。


「ゲームしすぎておかしくなった?」

「なってねえよ!」


佳月は超が付くほどのゲーム好き。気づけばゲームしてる。この間やっとの思いでVR買ったとかなんとか…。


「ほらほら、早く教室行って〜」

「「「はーい」」」


花びらを大きく跨いだ。

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