第13話 父と
「おっし! 命中!」
あれから俺は、週一でドワじいの所に通い今日で4回目だ。もちろん、シュヴァは見た目が目につくので、影に入ってもらっているが、窮屈だそうで、週一でも嫌々してくるが、離れると面倒だから仕方ない。
「がははは、たった4本だけじゃがな」
「成長してるだろ!」
最初は0、次の週も0、その次の週でやっと1本当たるようになった。それからしたら今日は大進歩だ。
「10本命中するのは大分先じゃのう」
ドワじいはやれやれと言った顔をする。
「すぐにできるようになってやるっ」
「あいかわらず、威勢だけはいいのう」
ドワじぃがニヤッとした笑顔を向けてくる。とても馬鹿にされている様な気がする。
「クソッ。来週こそは10本当ててやるからな」
「ほうほう。それはそれは楽しみじゃの」
俺は、負け犬の遠吠えの様なセリフを吐くと、ドワじぃの店を後にした。
商手街を歩く。最初は、ただ歩くのも一人だといつ絡まれるんじゃないかとビクビクしていたが、3回目ともなると、だいぶ慣れた。
意外とフード姿の子供が歩いていても皆気にならないものだ。
すると、大きな風が吹き、フードが脱げた。
「やばっ」
俺は、慌ててフードを元に戻す。
すぐに戻したし、髪が見えていたのは数分だと思うし、セーフ?
「り、リディア…?」
あ、アウトだ。俺が振り返ると、そこには父がいた。タイミング…なんでこんなとこにいるんだ。
「リディアだろう?
フードなんて被って…あれからどこにいたんだい?
ずっと探して…」
父が肩を掴んできた。
「ごめん…あの時は…どうかしていたんだ。ごめんよリディ。家に帰ろう…家に」
その後の展開は速かった。屋敷の、父の部屋に連れて行かれ、そこでも父に謝られた。
どうかしていた。悪かったと。父は俺にクソと言われたのが、相当こたえたらしくしばらく呆けていたらしいが、母に俺が家出をしたと伝えると、今までの口論(主になんであんな子産んだんだとか)がなんだというかのように怒ったらしい。
娘が出て行きたくなるような事を言ったのかと…危うく家が家事になりかけた…らしい。母は炎系だもんね。怒ると火が出るのかな?すごく迷惑だな。
ついでに、兄ズも俺がいなくなった事にショックをうけ、父を責めたとか。本人達も俺が閉じ込められている間は1日目以降来なかったくせにな。
とにかく、皆何かしら俺がいなくなった事に対しての後悔をし、父は家族から凄く攻められ、見つかるまで家に帰ってくるなといわれ、ここ1ヶ月、街で俺を探しながら、宿で寝泊まりしていた所を俺を見けたと。
探しているとは聞いていたが、父が街にいるのはおかしいなと思っていたが、帰ってなかったのな。仕事とかどうしてたんだろうか…。お疲れ様である。
そして、たぶんだけど、俺が出て行ったことで、シュヴァがいなくなり、本当の自分に戻ったんだろう。シュヴァは解けないと言っていたが、何日もかけて囁いていただけの、不安感を増幅させるものだし…家の雰囲気を暗くしてたし。いなくなった事で家の雰囲気が元に戻り、囁く声もなくなった。そこで理性が戻ってきたんだろう。
そこで俺は仕方ないから許してあげることにしたのだ。条件付きで。条件は3つ。
その1、シュヴァを飼う事に反対しないこと。
影からシュヴァが出てきた時は父は驚き、少し怯えた顔を、しながら了承してくれた。家族の説得も任せろと。首輪も何個でも買ってやると。もちろん、シュヴァは嫌がっていた。ネックレスタイプを探そう。
その2、二度とあんな事を言わない事。
本音じゃないかもしれないけど、傷ついたからだ。二度と言ってほしくない。こんな娘とか、産まなきゃとか、言われるのはもう嫌だ。それに関して父は二度とない!操られても絶対言わないと言ってくれた。
泣きそうなぐらい嬉しかった。
その3、俺を男の子として育てて欲しい。
これには大反対をくらった。何故と聞かれたが…言えないとだけ答えた。髪の毛が短くなっているのもあってか、俺の本気が伝わって、ひとまず保留となった。これは家族会議案件だと。
「ふーん。それでヴァイスは帰るんだ?」
いきさつを、ルイに話すとムスッとしている。
「まぁな。本気で探してたっぽいし、帰るよ。今日も話だけしに来たんだ。父待ってるし」
指を指す方向に父は立っている。世話になったから挨拶してくると言うと父も行くと言って聞かなかったのだ。
「ちぇっ迎え付きなら引き止めれないね。また、いつでもおいで? "ヴァイス" は僕の家族でもあるし」
ルイがいつもの調子でウィンクする。
「あぁ! 当分は来ないけどな」
俺もニッと笑い、またなーと手を降って、父の元へいく。
ツバキ達も手を降ってくれた。
帰りの馬車で父が、
「リディア、なんか、あの金髪の子に睨まれたけどなにか言ったかい?」
と言った。ルイが? 睨む? そんなことするやつじゃないけど…あ、女装させてる変態だと思ってるからかな…
「き、気のせいじゃないかな?」
「そうか…」
馬車のせいなのか父はガタガタと震えていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます