第6話 犬?に名前はをつけました
「外に出たい。」
ルイの家から自分の家に帰ると、家族は俺がいなくなっていたことに気づいていたらしく、大騒動になっていた。
そこに男装した俺が犬(?)を連れて「ただいまー」などとのんきに帰ってきたので、大目玉を食らったのである。
そのときに知ったのだが、この世界のペットは基本的に魔物らしい。というか、犬とか猫とかいないのだそうで、いるのはアースドックとかファイアーキヤッツという魔法を使う動物型モンスター。
なのでペットを飼うには、テイマーがテイム? だっけ?
よくわからないが、そんなんで友達になったのを、ペット用の首輪をつけて販売しいるらしい。だから、ペットを飼うには、テイマーから買うしかない。もちろん俺はテイマーではないし、もらったから首輪すらない。
ってか、この世界のテイマーってブリーダーみたいだな。
父から真剣な顔でどこから持ってきたんだい?
とか色々聞かれたけど…ちょっとそこら辺でとか言ってごまかした。ごまかすしかないよな。魔王様からもらいましたとか言えないし。
母は真っ黒なのを見て、なんてものをと激怒した。犬型で流行している
対して、真っ黒はフェンリルって呼ばれている狼ぐらいらしく、大きくなると厄介なのだとか。実際は魔王の子供なので、フェンリルとは違うのだが。
母は犬を殺してだの言っていたが、俺の首に黒いダリアの様なマークを見ると青ざめてしまった。
このマークは魔王様に急につけられたもので、犬が俺の元から逃走=死、俺が負った傷を犬が引き受けるという契約のものだそうだ。なんでも、貴重なものに傷がつくの嫌だし、息子はいっぱい居るからいいわだそうだ。息子も大事にしろよ。代わりに俺が愛を注ごう。
…ちなみにダリアマークなのは魔王の名前がダリアだかららしい。お前の名前なんて何でもいいよ!勝手に首に変なものつけやがって。
両親はこれを見て、呪われているやら悪魔憑きやらカタカタ震えながら言っていたが、そこまでひどいものなのだろうか?
目をつけられているが、別に傷物になったわけではないのに…。
そんなこんなで、俺は今犬(?)と一緒に部屋に入れられた。いわゆる監禁である。もう5日目。
初日は兄ズが来てくれたのだが、2日目からは兄ズも来なくなった。
「グルルルル」
「おっ!帰ってきたのか?」
一緒に監禁されているはずの犬だが、1日目の夜からいなくなり、たった今帰ってきた。威嚇しながら。あまり遠くに行くことはしない。どちらかと言えば、契約があるので、出来ないという方が正しいのだろう。だから、そんなに遠くには行っていないと思うのだが…どこに行ってたんだろう?
そーっと手を伸ばす。もふもふを前にして触らないほうが罪だと思うからだ。痛いっ。撫でようとすると噛まれてしまった。まるで、お前など認めていないんだと言わんばかりだ。
「母親と一緒にいたかったんだろう? ごめんな。」
「ヴゥゥ」
噛んだまま唸ってくるが、噛まれた方の手とは逆の手で撫でた。
「お前名前なんて言うんだ?
すぐに居なくなったから聞きそびれたよ。友達になろう。」
「ト…モダ…チ…?」
「お前! 喋るれるのか!?
…そっか、魔王も喋ってたもんな」
「ガルルルルル」
喋ったと思ったら威嚇されたし、距離を取られた。悲しい。
「喋れるなら名前! 教えてくれよ。」
「ガルルルルルルル。ガチン、ガチン。ガルル」
それ以上近寄ったら噛むぞの合図のように歯を鳴らしている。
「わかったよっ、教えてくれないなら勝手につけるからなっ」
黒い犬…。俺の犬。子供の頃から犬好きで、飼いたかった俺は名付け親に憧れており、ドキドキしながら考える。
よし! そうだ!
俺の男名が白のドイツ語でヴァイスだから…あれにしよう!
俺の、俺だけの相棒となるんだから。
「シュヴァルツ! お前の名はシュヴァル…いや、長いからシュヴァだ!
お前が教えてくれるまで今日からお前の事はシュヴァと呼ぶからな。」
「シュ…ヴァ…?」
「そう! シュヴァ、俺がヴァイスだからお前はシュヴァ。#相棒__パートナー__#っぽくていいだろ?」
「オレ…ナ…マェ…パ…トナ」
ボンッ
大きな音と煙? 何も見ぇねぇ…。ん? 人影?
煙の中から同い年ぐらいの真っ黒な髪の男の子が現れた。角と、羽がついている。
…まさか?
「うわぁーーーん。ごめんなさいー。ぼ、ぼく、ママに好かれたくて…皆に魔法かけちゃった…。ヴァイスのこと嫌いになる魔法」
「えっ」
現れた黒い少年はその可愛らしい大きな目が溶け出しそうなぐらいの涙をこぼしながら懺悔を始めた。
あの家族が、リディアを放置とか珍しいと思ってたら…まじか…。
「か、解除とかは…」
「むり…僕にはむり、一度かけたら戻れないの…ごめんなさい…うわぁーん」
「な、なんでそんなもの…」
「僕は…ヴァイスが孤独になるようにって言われてたから…ママに好かれてるヴァイスなんかって…不幸になっちゃえって…そう思って…思って…かけたの…3日かけて入念に…」
「まじかよ…」
あ の クソ 魔王 がっ
「な、名前…嬉しかったの…僕…名前しらなくて…だから…ほんとに…本当に嬉しかったの…でも、僕ヴァイスにひどいことしたぁ…」
「あーもう! 泣きやめ! いいよ。許してやるから」
「…ほんと? 僕の名前…ヒック…シュヴァって…ヒック…呼んでくれる?
名前つけたの…ウッ…後悔してない? 許してくれる…の?」
許すも何もシュヴァが悪いというより、ダリアとか言う魔王が悪いよね?
それに、家族がどうなってるかはまだわかんないし。
そして、名前付けてないんだな…あの
「してないよ! シュヴァがやった事は現状見てから決めるけど、名前は後悔してない!
何度でも呼ぶよ。君は俺の友達。シュヴァだ」
「ごめんなさいー。ウワァーン」
「いいよ。代わりに、これかの事、手伝ってもらうからな?」
「うん、ゔん」
「ってかお前犬型の時もそれぐらい流暢に話せよ」
「犬じゃないもん! それにっ、人の言葉はお口違うと上手に喋れないの」
「そうなんだ、犬んときは唸ってばっかだったもんな」
涙は止まったようでよかったが、次は頬をプクッと膨らましている。フグのようだな。
「ごめんって」
「犬じゃないっ! シュヴァ犬ちがう」
「はいはい、ごめんごめん、それでシュヴァ君。俺の家族にどんな魔法をかけたか教えてくれるかい?」
「えっとね…」
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