二.十二月二十四日

 今日はクリスマスイブ。世間はお祭りムードで盛り上がっているんだろう。一応、私達も例外ではないと思うけど。

「なぜに、居酒屋」

 ややげんなりしながら、カウンターで頬杖をついていると、一が不思議そうな顔をしたまま首を傾げた。

「なぜに、って相談の結果こうなったんだろう」

「それはそうなんだけど。冷静になってみると色々と足りないものを痛感させられてね」

 主に赤緑黄色のようなクリスマスな配色や、丸々と太ったチキンや、ホールサイズのケーキとかとか。私の視線を受けて、一は面倒くさげに鶏肉と葱の刺さった櫛を持ち上げる。

「ほら、おまちかねのチキンだ。思う存分食べろ」

 欲しいのは焼き鳥じゃないんだけど。そんな不満を表情に出しながらパクつく。たれの味と柔らかい肉の味にそれなりの満足を覚えてしまう。いや、おいしいんだよ。おいしいんだけど。

「えっと、一」

「なんだよ。まだ、不満があるのかよ。もう一本欲しいか。それとも、予定を早めてプレゼントでも」

 足もとに下ろしていた鞄を探り出そうとする一を空いている手で制したあと、首を横に振る。

「もちろん焼き鳥はもらうんだけど」

「含みがある言い方だな」

 櫛をかまえたまま釈然としない顔をする男の前で、手元のジョッキに入った烏龍茶をがぶ飲みしてから息を吐く。

「一応さ、私たちって、その、なんというか」

「気持ち悪いな。はっきり言えよ」

 無配慮な物言いに少しだけかちっと来たものの、一旦棚上げにしたうえで口を開く。

「その、世間的には、付き合ってる、わけでしょ」

「ああ。そういうことになっているはずだけど」

 一もさすがにこの件に関しては言い慣れていないせいなのか、やや言い淀んでいる。こういうノリには私も今だに慣れることができない。

 喧騒に耳を傾けると冴えない男たちの高笑いが聞こえた。

「今のこの状況はどうなの。ムードとかそこら辺的に」

「舞は、今日、楽しくないのか」

 櫛を差し出され反射的にパクつく。そうしながら、行儀が悪いかもしれないと思いながら小さく首を横に振った。

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