失われたフィルム

第1話 映画のあらすじ

『恐怖の吸血ミイラ』


 一九三〇年、公開。


 監督、ジョン・スミス。

 脚本、ジョン・スミス。

 主演、ジョン・スミス。

 いずれも同姓同名の別人とされる。


 フィルムは現存せず、関係者の所在も不明。

 ここに記すのは後年発表されたノベライズ版のあらすじである。





 平和で退屈な田舎町で暮らす三人の若者は、ある日、奇妙な噂を聞きつける。

 森の奥の打ち捨てられた屋敷に、今でいう孤独死を遂げた家主の遺体が取り残されている。

 家主はすっかり干からびてミイラと成り果ててなお自らの死を受け入れられず、夜毎にさまよい歩いては人々の生き血をすすって回る。

 その話を真に受けたわけではないが、三人の若者は軽い好奇心から夜の闇に紛れて屋敷に忍び込む。


 翌朝、若者たちが帰っていないと気づいた町民が捜索隊を結成。

 程なくして若者たちは発見されるが、一人は死亡し一人は発狂していた。


 正気を保っていたアーサーの証言によれば――

 三人が屋敷の中を手分けして探索していたところ、地下室で悲鳴が上がった。

 アーサーが駆けつけると、ブライアンが狂ったように暴れており、なだめようとしたチャールズを階段から突き落としたとのこと。

 しかし警察の調べでは屋敷に地下室は存在せず、しかもチャールズの遺体の発見場所は屋根裏部屋。

 さらに――遺体に頭を打った形跡があるのは間違いないが、周囲に血痕はなく、それどころか遺体からは血が完全に抜き取られていた。


 矛盾する証言により疑いの目がアーサーに向けられる中、落ち着きを取り戻したブライアンはとても狂人とは思えない理知的な態度で、チャールズを殺害したのは吸血ミイラだと語り出す。

 ブライアンいわく、アーサーは自分が吸血ミイラを目撃したという事実に耐えきれずに正気を失い、居合わせたブライアンが犯人だという幻想に囚われてしまった。


 一方、チャールズの妹のセシルは、アーサーにはチャールズを殺害するだけの動機があると証言。

 一年前に起きたアーサーの恋人の事故死にチャールズが関わっているというのだ。

 セシルいわく、アーサーは何らかのトリックを使ってブライアンに吸血ミイラの存在を信じ込ませた。

 その証拠を掴むべく、セシルは単身、森の屋敷へと向かう。


 同時刻、ブライアンは精神病院から脱走。

 アーサーもまた、警察の監視の目をかいくぐって姿を消す。





 なおこのノベライズ版は映画のファンの一人が記憶を頼りに執筆し、関係者の承諾なしに出版したものである。

 内容の一部に映画と異なる部分が見られるとの指摘もある。


 Mikipediaより







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