西へ向かう道程で書かれた手紙

第1話 カリフォルニアに入った辺りで書かれた手紙

親愛なるオリヴィアへ


 わたしが旅に出たそもそもの目的は、妹を手伝って祖父の行方を探すこと。

 それが今は、妹のフリをした祖母から叔母を助け出すなんていうことになってる。


 サン・ジェルマンおじいちゃまがおっしゃったの。

 ルイーザなんて人格は最初から存在しない。

 ルイーザはもともとパトリシアおばあちゃまの体の一部で、見えない手で操られたパペット人形のようなものだった。


 ルイーザを作り出したあと、おばあちゃまは“パトリシア”と“ルイーザ”の一人二役みたいなことをやっていた。

“パトリシア”が本体で“ルイーザ”が端末。

 二人を同時に完全に演じ分けるのは難しくて、だからはたからはパトリシアおばあちゃまは痴呆のように、ルイーザは異様におとなしい子供のように見えた。

“パトリシア”の肉体が機能停止したことで、本体の役割が“ルイーザ”に移った。


 ねえオリヴィア、わたしはこんな話を信じなくっちゃいけないらしいの。

 こんなのパパにどう話したらいいの?

 パパはルイーザが自分の娘じゃないってわかっていたのかしら?


 オリヴィア、わたし昨日までは、早くイギリスに帰りたいって思いながらも“ルイーザの姉”としての役目を果たそうって無理してきたの。

 今は、前に進むのは怖いけど、イギリスに戻るのも辛い。

 アデリン叔母さまを見つけるまで帰らないっていうのは、わたしがパパから逃げてるだけなのかもしれないわ。


キャロラインより

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