第9話 フェブラリータウンからの手紙 3

親愛なるオリヴィアへ


 レターセットが前のと違うのに気づいてる?

 ホテルを変わったの。


 アデリン叔母さまが前のホテルは危ないって言い出して、夕食も取らずにチェックアウト。

 そんな時間に次のホテルの当てもないのに、急いで探せば何とかなるって。


 そうしたらルイーザがパンフレットを出してきたの。

 昨日は一日中、一緒だったのに、いつの間にどこで手に入れたのかしら?

 訊いても怪しげに笑うだけ。

 いいの。この子はこういう子だって、もう慣れたわ。


 パンフレットに書かれていたホテルは、町の外れにポツンと建っていて、そこに着くまでしばらく歩いたんだけど――

 フェブラリータウンには馬車もタクシーもないらしいの――

 もとのホテルを出てからずっと、鳥の羽音が聞こえていたの。

 でもね、鳥の姿は見ていないのよ。

 道沿いの建物の屋根で隠れて見えないの。

 羽音が気になって何度見上げてもそうなの。


 わたしたち、あとをつけられていたみたい。

 だってその鳥は、一度も姿を見せなかったの。

 単にあちこちに鳥が居て、鳥が多い町だっていうだけなら、姿をチラリとも見せないなんておかしいわ。


 それでね、町外れの、軒が途切れるところで羽音がピタッと止まったの。

 このとき、たった一度だけ、この鳥の鳴き声が聞こえたよ。

 キイイって、悔しがってるみたいな声だったわ。


 だから今度のホテルはきっと大丈夫よ。

 建物が古いせいか、ちょっとヘンなニオイがするけど。

 こちらのホテルはデザインだけでなく本当に古いみたい。

 まあ、大丈夫よ。


キャロラインより


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