第9話 魔術書(下巻)の所有者への手紙の返信

拝啓 ウィルフレッド・ウィルソン様



 あなたがお探しの本と同じものは確かに父のコレクションの中に存在しますが、父はこの本を他人の目に触れさせることを頑なに拒んでおり、もし我が家にお越しいただいてもお見せすることは叶わないと思われます。


 ですが先日のお手紙に書かれていた事件は、当時の世間の熱狂もあってわたくしの記憶にも残るところであり、もし父の本があの事件の謎の解明に役に立つなら、そしてもしウィルソン様が危惧されておられるような世界の危機を防ぐ役に立つのであれば、父の意にそぐわない範囲での協力は惜しまない所存でございます。


 さしあたりまして先日のお手紙の内容から、件の絵画に関係のありそうな箇所を、例の魔術書から書き写しましたものをお送りいたします。





・恐れるなかれ、偉大なるクトゥルフは、汝らに富と権力をもたらす。


・汝らの魂を巫女の肖像画に捧げ、その肉体に自ら火を点けよ。

 汝らの灰は、大いなる神殿都市を描くための絵の具に混ぜられる。


・十二人の巫女のうち六人が生け贄となり、その血は大いなる神殿都市を描くための絵の具となる。


・汝らの魂は神殿都市へと導かれ、偉大なるクトゥルフにより、愚昧なる人類の上に立つ権利を与えられる。




※手紙の二枚目以降には儀式についての詳細が、非常に丁寧な文字で一語一句書き写されているが、公表するべきものではないため割愛する。

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