第4話 美術雑誌の記事の草稿

美術雑誌の出版社のデスクの奥にしまい込まれていた草稿





 ここ最近のサロンでもっとも話題となっているのは『嘆きの巫女の肖像』と名づけられた十二枚の絵画についての噂である。


 十二枚はいずれも同じ構図の肖像画であり、十二枚同時に画廊へ持ち込まれた。


 モデルとなったローブ姿の婦人は、ギョロリとした目や、ぬめりのような光沢のある顔などの過度のデフォルメのために同一人物のようにも見えるが、注意をもって観察すれば全て別人だとわかる。


 いずれのタッチも良く似ており、サインも一致しているが、鑑定士は十二枚すべて異なる画家の手によるものとしている。

 なお、サインは見たことのない文字で記されており、読み方はおろかどこの国の文字であるのかすらも判然としない。


 この十二枚の絵が話題となっているのは、芸術的な価値からではない。

 この絵を持つ者には富と権力がもたらされるという、オカルト的な売り出し方をされたのだ。

 多くの良識ある芸術愛好者が一笑に伏す一方で、十二人もの購入者により『嘆く巫女の肖像』は完売となった。

 しかし実際は購入者は





※草稿にはこのあと、何度も書き直した跡が見られるが、少なくともこの紙片においては記事として完成していない。


 同出版社にて旧号を調査。

 該当記事、発見できず。

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