第2話 出会い
今日の学校の予定が終わり全校生徒は帰り始めていた。
大体の生徒は今日同じクラスになって仲良くなった人とカラオケに行ったり、前からの知り合い同士で近くのショッピングモールに行ったり、一人で家に帰る。だが俺は今生徒指導室の扉の前にいる。
俺は朝車から降りたときに鈴木先生から言われた生徒指導室の扉の前に来たのだが、何か嫌な予感がしていた。
どうするよ。入るか?あの先生が俺を呼び出した理由が全くわからない。何かめんどくさいことを頼まれるかもしれない。ならいっそこのまま扉を開けずに家に帰った方がいいんじゃないか?と俺は心の中で自分を説得した。
「よし!帰ろ」
俺はそう言って扉に背を向けて生徒指導室の前から去ろうとしたとき
「バーン」
俺の後ろから何か重い物が壊れたような音がした。
その瞬間、俺は後ろを振り向いてその音の正体を確認しようとしたが、何か重いものが俺の背中にぶつかり俺はそのまま床に叩きつけられた。
そして俺の視界は真っ暗になり・・・俺は気絶した。
「ガンガンガンガン」
何かを叩いている音で俺は目を覚ました。
目を開けるた途端俺は今いる場所がどこかわかった。
白い四角い机を挟むように二対二でパイプ椅子が置かれているこの部屋は生徒指導室だ。
そして何かを叩いている音の方向を向くとそこには鈴木先生がドアを工具で叩きながら直していた。先生の横には見たことない一人の女子生徒が先生のサポートをしていた。
サポートをしている女子生徒が俺の視線を感じたのか俺の方を向いた。
その時女子生徒は恥ずかしそうに顔を真っ赤にして鈴木先生を盾にして俺から隠れた。
その女子生徒の行動から鈴木先生も俺が目が覚めたことに気が付いて、俺の方を向いた。
「おー起きたか荻原。元気そうでよかったよかった。危うく私が教師を辞める事態になっていたよ」
なんだ教師を辞める事態とは。と俺は一瞬思ったが、鈴木先生の今の発言とドアを直している状況から俺が気絶した理由が大体分かった。
「俺は先生が吹っ飛ばしたドアに叩きつけられて気絶したんですか?」
「なんだその言い方!私が全部悪いみたいじゃないか!」
いや全部悪いみたいじゃなくて全部あんたが悪いんだよ。と俺は思った。
「荻原が帰ろうとしたのが悪いんじゃないか」
「いやそれでもドアを吹っ飛ばしますかね」
「まぁいい。今回は気絶させてしまったからな。帰ろうとした件は許してやろう」
ちょっと待て、気絶しなかったら帰ろうとしたこと許してもらえなかったのか?
俺は気絶した自分を少し感謝した。
鈴木先生が俺が座っているパイプ椅子の対面側にあるパイプ椅子に座った。そして女子生徒も鈴木先生の座っているパイプ椅子の横のパイプ椅子に座った。
「さて、本題に入ろうか」
鈴木先生は真剣な顔をしながら言った。
その表情を見たら俺は少し緊張してしまった。これから何を言われるのかが想像もつかない。
「荻原、君には一つお願いしたいことがある」
「何ですか。」
「まぁその前にこの子の紹介をしないとな、ほら」
そういって鈴木先生は横に座っている女子生徒の肩に手を置いた。
「2年E組花澤 雛乃です」
花澤は短い自己紹介をした。
「まぁ聞いてのとおりこの子は花澤雛乃。君と同じクラスだ。で、君には花澤をクラスに馴染ませてほしい」
花澤の姿を改めてみると、背丈は162cmくらいで髪色はきれいな銀髪で顔はかわいいというよりきれい系だ。そんでもって周りから話しかけられそうな雰囲気も出ている。このような子ならすぐにクラスの輪に入れそうなんだが。と俺は思った。
「なんで俺に頼むんですか?俺よりもっと適任がいるはずなんですけど。例えば、クラスの群れている女子グループのリーダみたいなやつにお願いするとか」
「荻原だから意味があるんだよ」
「その子には悪いですが、その子をクラスに馴染ませたところで俺に何もメリットがないのでお断りします」
俺がそう言うと、花澤は少しがっかりした感じだった。
鈴木先生は少し笑みを浮かべながら言ってきた。
「まぁこの手は使いたくなかったが・・・荻原、この学校は1年生の時成績に1が一つでもついていたら進級できないのは知っているよな」
そうこの霞ヶ丘高等学校は高校生になって浮かれて勉学をおろそかにならないように1年生は成績に1が一つでもついていたら進級不可能になってしまう。
そんなことこの学校に入学した時に痛いほど先生に言われたから知っている。
「それがなんですか」
「12、8、3、10、15、この数字に心当たりはあるか?」
俺はその数字の意味が全く心当たりがないので、首を傾げた。
「わからないなら教えてやろう。この数字たちは荻原、君の1年の頃の数学のテストの点数だ。よくこの点数で数学の成績に1がつかなかったな」
俺は鈴木先生の発言から鈴木先生のおかげで進級できたことに気づいた。
「なんででしょうね。奇跡でも起きたんでしょうかね」
俺はごまかした。
「君本当はわかっているんだろう。」
鈴木先生はすぐに見破いてきた。
「今からでも成績の書き間違えといえば君1年生に戻っちゃうけどなー」
鈴木先生はいやらしそうに言ってきた。
そのときドアからノック音が聞こえた。
「鈴木先生。お電話が入ってます」
40歳くらいの女の人の声が聞こえた。
「わかりました。今行きます」
鈴木先生はそう言って立ち上がった。
「荻原ちょっと考える時間をあげよう。花澤、荻原と何か話してやってくれ。そいつかわいそうな奴だから。ぷぷっ。」
鈴木先生は俺を馬鹿にして生徒指導室を後にした。
生徒指導室は俺と花澤の二人きりの状態になった。
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