第1話 担任と始業式

 午前8時20分今日から高校二年になる俺は学校に向かっていた。だが俺は一つの大きな問題を抱えていた。それは、学校の登校時間に間に合わないということだ。


 スマホの待ち受け画面に映った時間をチラチラ見ながら「これは結構やばいな。8時28分までには教室にいなくてはいけないのに・・・」と近くにいる人でも聞こえないくらいの小さい声で呟きながら俺は走っていた。


 通常は午前8時40分にチャイムが鳴り朝のホームルームが始まる。だが、今日は違う。今日は始業式があるので8時30分にはチャイムが鳴り、朝ホームルームが始まる。


 走っている俺の横を一台の赤色の軽自動車が通り、俺から10メートルくらい先に止まった。俺は走ってその赤い軽自動車を通り過ぎようとしたとき車の窓から一人の女性が話しかけてきた。


「お困りのようだね少年」


俺はその声に聞き覚えがあった。

誰であろう。

そう去年の担任の教師鈴木桜先生だ。


「まぁちょっと困ってますね。」

俺は携帯の画面に映った時間をチラッと見てから言った。


この時8時22分。


鈴木先生はニヤッと不気味な笑みを浮かべた。

「じゃあ乗せてやるぜ若者!」

鈴木先生はテンション高めで言った。

「なんか先生朝から変なテンションですね。」

俺は鈴木先生を冷たい目で見た。

「そんなこと目をする子は乗せないぞぉ」

「すいませんでした。俺が悪かったです。乗せてください。」

ちょっと焦りながら俺は言った。

先生はそんな俺の焦った姿をスマホで録画し、車のドアを開けて俺を車に乗せて車を走らせた。


車内で1年の頃の俺の成績でよく進級できたなという会話をしているうちに学校に着いた。


この時8時25分。


車を降りて、

「荻原これからよろしくな。あと、話があるから今日の放課後に生徒指導室に来てくれ」

先生はそう言うと、俺の返事を聞く前に走って職員室に向かった。


そして俺も自分のクラスを確認して教室に向かった。


8時28分。俺は自分のクラスである2年E組の教室に着き、席に座った。


ここで、なぜ8時30分から朝のホームルームが始まるのに8時28分までに教室にいなくてはいけなかったの?と思う人は100人中90人以上はいるだろう。


答えは簡単だ。朝のホームルームが8時30分から始まるのに8時29分、8時30分に教室に入ってきたら目立ってしまうからだ。まず29分くらいになったらみんな席に座りだして、ドアのガラガラという音を聞いた途端視線が入ってくる人間に向けられるからだ。

そして8時30分は地獄といっても過言ではない。先生がいつ入ってきてもおかしくない状況でドアをガラガラと開けたら「なんだー、先生じゃねーのかよ」と少し騒がしい連中がからかってくるからだ。

このような問題を起こさないために隼は8時28分に教室にいようと思っていた。


俺はカバンの中から本を取り出した。

そして俺は先生が入ってくるまで本を読んだ。


教室内では決まった話題でガヤガヤしていた。

「先生って誰だろうね」

「○○先生がいいなー」

「あたりの先生だったら誰でもいいわ」

などといった話が教室を飛び交っていた。


そこにガラガラとドアを開ける音がした。

その音を聞き、俺を除いたクラスの全員はドアの方に顔を向けた。


そして一人の女性の先生が入ってくる。


その女性の先生は・・・・・。


鈴木先生だ。


クラスの俺を除いたクラス全員は喜んだり、奇声を上げていた。

なぜなら、鈴木先生は20代前半という年齢で茶色のつやつやした髪と整った顔立ち、体も出るところはきちんと出て、引き締まるところはきちんと引き締まっている。霞ヶ丘高等学校の大和撫子と生徒から裏で呼ばれており、男子生徒全員の理想の女性といっても過言ではない。

女子生徒からは様々な相談などを受け、すべてをきちんと解決している。

なので生徒からの信頼はとても強い先生だ。


外側も内側も完璧な先生がクラスに入ってきた。このタイミングでクラスに入ってきたということはこのクラスの担任は鈴木先生。

だからクラスの連中は騒いでいる。


だが俺だけは別に喜んだりはしない。

なぜなら、朝鈴木先生の車を降りた時の鈴木先生の発言の「これからもよろしくな」というのはこういうことだったと思っていたからだ。


そしてもう一つ。鈴木先生は学校では完璧な先生などといわれているが、実は性格に難ありの人間だ。

この事実を知っているのはおそらく学校で俺だけだろう。


鈴木先生は教卓の前に立つと自己紹介をした後に今年度の目標を話した。

「今年度の目標はクラスのみんなが仲良くいられるように頑張ります」

鈴木先生は笑顔で言った。


そして始業式が始まる時間が近づいていたので、クラス全員は鈴木先生の指示のもと体育館に向かった。


始業式は校長のつまらない話を30分以上立ったまま聞かされた。

おかげで俺の足はガクガク小刻みに震えていた。


校長の話が終わると無事始業式は終了した。


教室に戻ると

「今日は新年度初日だからこれで終わり」

鈴木先生はクラス全員に言った。

「よしゃぁぁぁ」

クラスの騒がしい連中が叫んだ。


なんて騒がしいクラスになってしまったんだ。と俺は心の中で思った。


「起立、気を付け、礼」

まだ委員長などは決めてないので鈴木先生が号令をした。

「さようなら」

クラス全員が言った。






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