第3話 透明感のある青年

視線の先に映ったのは、とても透明感のある青年だった。


未成年?成人してる?どちらか定かではないけど、もしかしたら、僕と同じくらいの歳の人かもしれない。


「どうかされましたか?体調悪いですか?」


その透明感のある綺麗な青年が、心配そうに僕の顔を見つめた。


白い布で縁取りされたデニム生地のエプロンが、彼をとてもステキに演出する。


モテそうだなぁ、なんて、思いながらボーっと彼を見ていたら、また、耳鳴りが来た。

ザザザザーーー、ザ。


ピーーーーーーピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピ。


う、ピピピピうるさい。

右耳を右手で押さえる、眉間に皺が寄る。

とても濃い、ミントの香りが鼻の奥に漂い、ツンと来るせいで、眼球が刺激されて涙が出てきた。


ポロポロポロポロ、止まらない。

そのときビリっと音がした。

纏っている袋をやぶった音。

四角く畳まれたおしぼりが、グッと目に押し当てられる。

「・・・っ、ありがとうございます。」

小さく呟く。


「ご注文はカフェオレでよろしいですか?」


僕はうなずく。ほとんど毎日のように来ているから、僕のことを知っているのかな。

そんな風に、ただぼんやりと。

今の僕には、そんな思考しか出来ない。

ただただミントの香りが収まるのを待つしかなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る