第2話 ミントの香り

カランカラン。

「いらっしゃいませ〜、お好きな席へどうぞ。」


辺りを見回すと目についたのは、白い格子のついた大きな窓に沿った、明るい4人がけのテーブル席。


窓ぎわに座り、左側にあるもう1つの椅子にカバンを置く。


テーブルには小瓶に白い花弁の切り花が2本生けてある。


2本の茎が交差して並ぶその姿を、僕はぼんやりと見つめていた。


さっきの耳鳴りはなんだったんだろう。

首を下げて目を閉じる。

腕組みをして、少し肩の力を抜く。

「はぁ〜、疲れた。」僕は呟いた。


ここは僕の家から5分ほどの場所にある、お気に入りのカフェ。


清潔感のある真っ白なカウンター。

真っ黒な髪の毛を後頭部で綺麗に1本に束ねて、シュッとした正しい姿勢でコーヒーを入れてくれるマスター。


そのマスターの背景にある棚には、たくさんのオシャレなカップが綺麗にディスプレイされている。


僕のおすすめは、マスターから選ばれた艶々のカップの中に、コーヒーとミルクが混ざりあって溢れ出そうなほど並々と注がれる、絶品のカフェオレ。


綿あめのようにふわふわで少し甘いミルクが、毎度くちびるの上についてしまう。


そのついてしまったミルクを、おしぼりで口を拭くような仕草をしながら、その下で、ペロッと舌を出して舐めるのが、なんだか楽しくて、好きなんだ。


家に帰る前にこのカフェに立ち寄り、1人でケータイを触りながら、ゆっくりカフェオレを飲むそのときが、1番僕を癒してくれる。


「いらっしゃいませ。」


声が低いな、男性の店員さんだなぁと思い、

首を上げて視線を向けた瞬間、鼻の奥にミントの香りがツンときた。


え?


ミントの匂いに驚き、彼を見つめた。

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