第19話 戦技
ハイレがいなくなってから二週間が経った。
村の人総出で探したものの何も見つからなかった。
「せい!」
「…はあっ!」
訓練用の長剣で相手の剣をはじく。
続いてはじいた勢いを利用し相手の胸を狙う。
「…っ。」
相手ははじかれた剣を自分のもとに戻し、俺の斬撃を防いだ。
間髪入れずにひたすら斬撃を繰り出す。
これは、さすがにこらえたのだろう。
俺が振り放った斬撃が当たった。
そして、もう一度狙う。
「…はああ!」
「くっ…。」
「「そこまで!」」
剣を構えなおし、さやに収める。
「「無言」」
足音のみが聞こえる。
そして、剣を収めると同時に緊張を解く。
ハイレがいなくなったあと、俺は彼がこれまで受けていた訓練を受けることになった。
学校で申し訳ない程度に教わる自衛目的逃げ方ではなく。
実践的で、致死的で、どこか虚しかった…。
「「死」」を感じる訓練、「「戦技」」。
長刀での斬撃、打撃、刺突を主にし、肉薄、徒手格闘まで行うものだ。
なお、傷は魔法での治療によるためすぐに訓練に戻ることになる。
この訓練で一番大事なのは「「精神力」」で、ひたすら痛みを感じる、休めない、逃げれない…。
心の方が先にダメになってしまうことが多い。
また、騎士の家のものや、自警団の息子など家によって強制させられることも多い。
しかし、彼らはそれをものともせず訓練に励む。
それを、自分の運命と見定めるように…。
自分は選ばれた者だと感じるように…。
ここには、そういった若者…子供たちが集まっていた、それも男子だけではなく女子もだ。とはいえ、彼女たちもそれなりの家庭なのだろう…。
しかも、彼らは自分より年上だ。
俺はこの中では最年少に部類する。
まあ、同い年もいるから一人ではないし、本当に最年少とも言えない。
とはいえ、
この次に起こることはすぐに推理できるはずだ。
「おい。」
「なんだよ?」
一つ年上の名前も知らないやつが俺に声をかけてきた。
「おっ、平民でが俺にその口の聞き方か…。」
「…平民…か。」
「なんだ、自分が平民だってことも忘れたのか?」
「いや、王族じゃない奴に言われてもって…感じで…それに、平民かどうかなんて気にしていたら,一生そのままかもしれないぞ。」
「はあ…なんだ本当に平民のくせに俺を馬鹿にするのか?…いいだろう、こいよ、命をかけようぜ。」
「ああ、…もう顔を見れなくなるのがとても嬉しいよ。」
俺は脅し文句のようにそういう…。
基本的にだが、口喧嘩は言い返すしかないのだ…。
さて、年齢によってある程度子供の中で発生する問題がある…。
すぐにわかるとは思うが…。
こういう場合、「「いじめ」」が起きる。
優等生(エリート)っていうものはそこら辺のより性質が悪い。
頭が良くはないが、狡猾で家柄すらはずことなく使う。
口論の結果、俺は殺し合いを選択した。
言い方は悪いが要するに決闘だ。
年上とのこうしたある種の嫌がらせは友達、ハイレからも聞いていた。
物を隠されることぐらいはすぐに予測できていたので魔法を使いしまっておいている。
それと、食べ物にも気をつけるようにしている。
「…ああ、いいだろう。それじゃあ、いつだ?」
売り言葉に買い言葉、さて剣の技術では今のところ勝ち目がないのでどうしようものか…。特に何も考えていなかった。
「今からだ!」
そうやって、貴族殿はキレてきた。
予想通りだな。
「ほら、抜けよ。」
そういって、そいつは本物の装飾ばっかりな派手…もはや汚いに達する迷品の剣を抜いてきた。
興奮気味に荒げた声は、品も何もないな…。
俺は剣を握るときに使っている白い手袋を脱ぎ。
「あっ?」
思いっきりそいつに投げた。
「「重力」」と「「大気圧」」と、「「圧縮した空気」」を詰めて…。
そいつに、投げつけた。
「こんなの…あああ!」
魔法で圧縮したもの…空気。
空気は主に窒素からなる混合物だ。
「「圧縮」」…本来の意味合いとなる「「圧縮」」だ。
つまり…。
空気を圧縮させるとこで白い手袋の中を「「液体窒素」」で満たしたのだ。
貴族が液体窒素の冷たさにうろたえている間に後ろから首を掴み、足で腰を蹴り、後頭部から落とす。
貴族は案の定気を失った。
「「命」」をかけるとしたが、さすがに神父さん達にも迷惑がかかるし、シェスカさんに迷惑をかけることは俺としても許しがたいことなので、そいつの剣を浅くそいつの腹に刺した。そして、血が滴る程度に少し横にずらした。服の上からなので、本当に浅い傷だ。
「俺の勝ちだな。」
次の日から、周りから怖がられた…まあ、友達がいないのは前からなんだけどね…。
「はあ…。」
俺は、軽くため息をついた。
文系だけど異世界で活躍できるよね? 葵流星 @AoiRyusei
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