第17話 約束

「ここです…。」


そして、俺は自分の畑をイグライザ騎士団長に見せた。

しかし…。「「こんのおおおばっかああああああああああああ!」」っと叫びたくなるほど辺りは凄惨な光景だった。鉄条網に絡まって死んだウサギ。レーザーにやられた鳥など何やら赤色と濁った色が柵に沢山ついていた。


「…ほお。これは、なんというか…ふむ…。」

「団長!」

「まあ、落ち着け…。変わった植物だな…。」


びくっ…。


「なんだ?これは!」

「魔女ですよ!この子は、魔女にたぶらかされているに違いない!」


びくびくびくびく…。

ああ、俺の異世界生活はこんなところで終ってしまうのか…。

「「おお、レイジよ…処刑されてしまうとは情けない。」」

なんて、RPGの教会のBGMが聞こえてきた。

シェスカさんのパイプオルガン…もう聞くことができないのか。

火あぶり、水没、生き埋め、車輪刑、八つ裂きなど古今東西の拷問処刑が目に浮かぶ…。魔女にはそうしてもいいのだ…。

ギロチンなんて無いよね。

大剣でガシっかなあ?。

処刑人がへたくそだったら死にきれない…。

はあ、死ぬにも大変なんだぞ…。


「これだ、これだよ!」

「はい?」

「団長殿?」

「ははっ、これはすごい。なあ、君…王都の学校に通わないか?」

「えっ?」


今、学校って・・・。

なぜ?。


「あの…団長様?」


シェスカさんが弱弱しい声で団長に声を掛ける。


「何かね?」

「あっ、はい…今の話。」

「ああ、彼を学校に通わせるのだよ。」

「ほ、本当ですか!」

「ああ、騎士の名にかけて約束しよう。」

「だっ、団長殿!」

「どうした?」

「いえ、いくらなんでも君が悪くはないですか?」

「ほう、それじゃあ貴様はこの死骸の山をどう見る?」

「悪魔ですよ!こんなの…。どう見ても…その子は普通ではありませんよ。」

「ああ、魔術だろう…なっ?」

「はっ、はい…。」

「それじゃあ、君はどうする?ここで、君は満足なのか?もう少し外の世界を見てみないか?」


光栄なことだな、それは…。

しかし…。

いままで面倒を見てくれた、神父さん、シェスカさん、そして、預かりの身であるセフィア…。

彼らを裏切ることになるのではないか…。

いや…出ていった方が良さそうな気がしなくもない…。

あまり悪い気はしないと少し思った…。


「行きなさい、レイジ。」

俺が少し戸惑っているのに気づいたシェスカさんはそう言った。


「シェスカさん…。」

「あなたはもっとこの世界を見るべきですよ!…たしかに、寂しくはなりますがこれはたぶんあなたにとってもいいことですよ。是非とも、お受けになりなさい。」

「レイジ、あなたの行く先に幸あること、そして神の加護を。これもある種の導きでしょう…。」


そう、神父さんとシェスカさんは言ってくれた。

すると、キュッと服をつかまれたのがわかる。

見ると、セフィアだった。

その瞳は行かないでと告げているようだった。


「セフィア…。」

「団長さん!レイジを連れて行かないで!」

「セフィア、手を放しなさい。」

「いや、絶対嫌!」

「ワガママを言わないで…私だって、さびしいのは一緒です。」

「ダメ、行かせない!…せっ、セントフィリィア第五皇女セフィア・アレンセスメント・カイラムの名において命じます!レイジを連れて行かないで!」


そう、小さなお姫様は泣きながらそう言った。


「セフィア、俺は…。」

「いやだいやだいやだ…お願い一緒にいて…友達でしょ!」

「セフィア…。」

「はあ、それではこれを…。」

一瞬、彼女の手を振りほどこうと考えてしまった…。

俺とセフィアを見かねた、イグライザ団長は羊皮紙で出来た紙を渡してきた。


「騎士である以上…皇女様には逆らえません、そして、カイラムは我ら騎士の祖であります。しかし、私は彼を王都に連れていかなければならないような気がしてなりません。皇女様もこの村を離れる日が来ることはわかっているとは思います。それならば、皇女様がこの村を離れるまでの間、彼もあなたと共にここで過ごしてもらうことにしましょう。レイジ…君が15歳になるとき、私は君を迎えに来ます。」

「わかりました…。」

「それまでは、町の自警団の方で教育を受けられるように手配します。ところで今はどこで学んでいますか?」

「はっ、はい…町の方です。」

「そうですか…それでは、また。ああ…そうだった…うん…少し書き換えるから待てってくれ…。」


イグライザ団長は、部下からペンとインクを渡されると羊皮紙に文字を書いた。

そして、俺は団長からその羊皮紙を渡された。


「…これで、よし…それでは、私たちは引き続きハイレ君を探します。」

「わかりました…。荷物をここに置いといてはどうですか?」

「いえ、長いはできませんので持っていきます。神父殿、彼をよろしく頼みます。」

「ええ、お待ちしております。」

「それでは、またな…待っていろよ!」

「はい、待っています。」



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