第9話 姫様は卵泥棒?

釜の中から「炭」を取り出す。


「なんですか、これ?」


セフィアは俺が持ってきた黒いものを見て驚いている。

俺はそれを魔法で炭焼き釜から取り出し積み上げた。


「これが、炭です。」

「これって本当に燃えるの?」

「はい。」


燃えるんだよなあ…本当に。

燻製とか作りたいなあ…肉があれば…。

俺は、炭を何本か取り出して火をつけた。


「ほらね。」

「えっ、ええ。」


セフィアは驚いていた。

真っ黒い物が色を変えて燃えていくのに驚いているのか?

はたまた、乾燥させた木材を燃やしたところしか見たことないのだろうか?

少なくとも、釜又は炉を見たことがあるなら、石炭を見たことがあるはずだ…。

とすると、すでに魔法具がそういった鉄を扱うところで利用されているのだろうか?


「ははっ。」


おもわず笑いがこぼれる。

まさか、異世界でこんなことして人を脅かせるとはなぁ…。

何はともあれ、思っていたよりも異世界は面白いものかもしれない。

すると…。


「魔女!」

「えっ?」

「魔女よ、こんな黒いものが燃えるはずないわ!」

「いや、現に燃えているわけだし。それに、魔女は女でしょ?」

「噓よ、うそ、う~そ!」


彼女は俺に笑われたのがくやしいらしい。


「ははっ。」

「あっ、また笑った!」


妹ができたみたいだな…ものすごいこけにできる。

でも、どうやらお姫様らしいから…下手をすれば死刑かな。


「いいもん、そんなんだったらこうしてやる!」


彼女は何やら魔法を使おうとしている。


「わが名をきけ、われにしたがえ、ちみもうりょうりょうしょとして、われをあがめたたえよ、ここに力をしめせ!」


召喚魔法だろうか?。

おそらくどこか間違っているのだろう。

どちらにせよ何にも起ていない。


「えっ…そんなあ…。」

「ははっ。」


また笑ってしまった。

何痛いこと言っているのだろう…。


「うう…えうう…。」

「えっ…。」


セフィアはぐずついてしまった。


「まほうくらいつかえるもん、うそじゃないもん、しょうかんくらいできるもん…。お姉さんだって、召喚できたもん。」


うわーんと泣いている。


「なっ、泣かないで…。」

「だって、だってえ…。」


セフィアは泣き続けている。

ほっといてもいいだろう。

誰もいないんだし。


「姫様これも修行です」

「しゅぎょう?」

「ええ、そうです」

「うう…。」

「姫様は、ここで勉強だけでなくいろいろな経験を積むことで大人になれるのです。」

「本当に?」

「ええ、本当です。…それでは、私はやることがあるので」


そういってセフィアをほっといて作業をすることにした。

しばらくして。


「はあ~、終わった…。」


何とか畑を耕して炭を混ぜた。

これで効果がでたら出来た作物を売るのもいいだろう。

野菜じゃなくて柑橘系のがいいかな…。

あと、竹がこれ以上広がらないようにもしとかないと…。

これで、今日は終わりにして教会に戻ろうと思ったら…。


「レイジ、見て見て卵取ったよ。」


姫様が戻ってきた。

直後、すごく不安になったのは言うまでもない…。


「レイジ!見て、見て!大きいでしょ!」


彼女の後方に鳥が見える。


グウァァァ!


怪鳥の奇声が聞こえた。


「ああ、もう!」


作っておいた竹槍を構える。


「「うう…異世界でも子守は死ぬほど大変なんです!」」

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