第2話 基礎知識ではじめる竹栽培

心は高校生…身体は子ども…。

これ以上はやめとこう…。

宇宙(そら)から女の子が降って来ると思うか?。

答えは簡単さ、「「降ってくる」」

…何、考えているんだろうな。


なんにせよこのギャップを埋めなければならないだろう…。

とりあえずそこら辺のガキと喧嘩でもするか♪


…あとが大変だが。


「レイジ何をしているのですか?」

「いえ、ただ空を眺めていただけです」

「そうですか…。」


シェスカさんはどこか悲しそうだった…。

まあ、そうだろうな…。


「「転生」」したって、信じられないだろう。

というよりも、本来ならばこの身体はシンジという子供のものだった。

少なくとも、彼女のためにもそれを証明しなければならない。

彼女の「「心」」はそこまで頑丈ではないとは思う。

でも…だからこそ言った方がいいはずだ。


「あのシェスカさん?」

「はい、何ですか?」

「あの驚くかもしれませんが…。」

「…転生したのでしょう驚きましたよ。けど、悪い人はなさそうですね」

「そうですか?」

「はい、あの後私にも神託がありまして可能な限り手伝ってあげなさいと…驚きましたよ本当にそんなことがあるのだって…あのもしかして元の世界に戻りたいですか?」

「いいえ、もう身体は無いと思いますので…。」

「そうですか…すいません…。少しはあなたの世界のことをお聞きしましたから…。」

「いえ、こんなこと言っても信じてもらえないものだとばかり思っていましたから…。」

「ふふ、あなたは誰であってもこの世界のあなたはレイジです。何かあれば頼っていいですからね。」

「お世話になります。」

「ええ、あなたも立派になってくださいね。」

「はい。」


立派になるかあ…。

厳しいなあ、俺にはそんなこと…。


その後もただ空を見上げていた。

雲の形が変わるのは面白くはあるのだが…さすがに退屈だ。


基本RPGとかなら拠点は確保するものの動かないという選択肢はない。

さすがに町くらいこの辺にもあるだろう、それか市場くらい。


「…市場にでも出かけるか」


文字はこの三週間で覚えられた。

覚えれたというか見慣れたって、感じだ。


神父さんも大したもので、この世界の「「神」」という意味の「「レイ」」と、そして「「焔」」という意味の「「ジ」」を合わせたものが俺の名前「「レイジ」」だった…。けれど、この身体の彼についてはまだわからずじまいだ。


「「焔」」はプロメテウスということだろう。


正直なところこの名前を俺は少し気に入っている。


「シェスカさん!」

「はい?何ですかレイジ…さん?」

「街に出たいです。」

「はあ…そうですか、行ってらっしゃい。」


教会の扉を開け、俺は街へと向かった。


「いらっしゃ~い、今日はいいもの入ってるよぉ!」


街は活気で溢れていた。

露天商も多い。

この世界は文明のレベルがほとんど中世ヨーロッパのものと酷似している。

…たぶん、そのぐらいだとは思っている。

違うところは、魔法具というモノがあり、それが俺がいた時代のものと同じくらいに高度な技術を持っている。


例えば、「「活版印刷術」」まあ、新聞のことだ。

これは、神父殿が読んでいたためわかった。

協会の書庫も手書きではなかったため間違いはないだろう。


次に「「缶詰」」だ。

これも発明されたのは古いから正確にはわからない。

しかし、シェスカさんが「「缶切」」を使わないで「「きり」」を用いていたため、「「缶切」」よりも前のものだとは思う。


プルタブなんかないよな…このぐらいだと。


けど、調理用の魔法具があるらしい。

金はかかるが…。


あとは、「「柵」」かな。

木製だった…。

どうやら測量の技術はあるようだ。


「銃」は…無かったな。

代わりに「「剣」」とか…。


先生、俺は「「槍」」が好きです!。

剣なんて使いづらいから嫌です!


あっ、でも加工技術はあまり無いようだった。

どうせ魔法の加護だろうと思ったらさっき露店で売ってた。

予想通りだったよ…。

そうやって何となく歩いている面白そうな店を見つけた。

切ってあるものではなく「「鉢」」ごとだ。

俺が目にとめたのは何もない鉢だった。


「お兄さん、この鉢何にも入って無いよ?」


子どもの真似をして何も知らない振りをする。

けっこう恥かしい…。


「おう、坊主!それは、れっきとした売り物だ!バンブーって言うんだ!」


露天商のおっさんが俺に声をかけてきた。

このおっさんは他の国から帰ってきた船から金になりそうな物を集め定期的に市場を回っている人だった。さて、このバンブーというのは日本でいう「「竹」」だ。

英語での呼び方が彼の言っているそれだったのでたぶん、見た目からしても間違いない。竹は、発明王エジソンの電球にも使われていたくらいだからな。


「こいつは西洋のものでな、珍しいだけでよくわかんないけど買ったら何にも入ってねえの!どうしてくれんだ?」

「いつ手に入れたの?」

「ああ、今朝だ。船から取り寄せた。」


おそらく珍しいものだと聞き買ったのだろう…。

暇つぶしにはちょうどいい…。

そう思った。


「これいくら?」

「580フェイスだ」

「はい。」

「おう、持ってけ。」


そういうと、店の主人は俺に竹を渡し、俺との会話を見て興味を持った他の歩行人に話しかけた。


さて、前述の通り、距離や重さといった単位は存在するのだ。

580フェイスは580円。

子どものお小遣いくらいだ。

距離は1メートル、1フット。

重さは1グラム、1シード。

イギリス語が混ざっているものの、何のことかはわかる。


さて、この竹をどうしたものか…。

教会に持ち帰ろう。


……。


教会にたどり着くとシェスカさんに持ち込んではいけませんと言われたので教会の裏の池の方に向かった。

池というよりは沼が正しい。ただぬかるんでいるだけだ。

後から気がついたが粘土だった。釉薬(ゆうやく)をかければ磁器になるだろう。

まあ、水源は確保できたのであとは植えるだけだった。


この世界には魔法があるため、植物の育ちやすさもそれによるそうだ。

魔力とはエネルギーでそこら辺を漂っているらしい。

神社や温泉などのパワースポットを魔力の源と考えてみれば少しばかり合点がいく、とりあえず買ってきた竹を日の当たる場所に植えた。

あとは、水を与えるだけなのだが…。


…服に含ませるのはダメだよね。

魔法を使うか…。


実際のところ使うのは簡単らしい。

そう教会の本に書いてあった。


ということで根拠のないまま魔法を使うわけなのだが…。


「…わからぬ。」


触媒式なのか、リソース式なのか…それとも操作式なのか…祝詞(のりと)式なのか、まったくわからない。


「とりあえずリソースで試すか…。」


太陽光がいいだろうこの世界の人は考えられないはずなのだが…。


「…集まりが悪いな。」


誰か他にも俺と同じようなことを考えている人がいるのだろうか。

困るなあ…。

まあ、それでもある程度の魔力が貯まったので使うことにした。

すると、何の音もなくプラスチック製のジョウロが顕現し俺の目の前の地面に置かれた。


…なんかこう…エフェクトというか、派手さが無いような気がするのだが。


とりあえず、水入りのものが現れたので良しとしよう。


「ここら辺でいいよな。」


適当に穴を掘ってジョウロで水をあげた。


「さてと、それじゃあ帰るか…。」


そして、この日は教会に戻った。

けど、知らなかった…。

異世界の「「竹」」の成長がこんなに早かったなんて。

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