✿ 第三印 綺麗好きな女神さま(ほぼC) ✿
第17話 蒼静神社
女神サクラが月乃宮家に仮住まいを始めて一週間。
月音の両親は新たな娘が出来たように喜び、凪もサクラのことを二人目の妹のように感じていた。月音はことあるごとにサクラをライバル視していたが、サクラの方は無邪気に月音とスキンシップを取ろうとし、なんとも妙な関係性が出来上がっていた。
そんな日々の中、御朱印巡りの計画を立て始めた凪だが、一般の高校生が全国を巡ることは難しく、車もなければお金もない。以前に原付免許を取ろうと考えたときも、「バイクなんて危ないものダメ~!」と月音に全力で止められてしまった。それに、全国に山ほど存在する縁結び関係の神社をどう巡っていいのかもわからない。
金曜日の夕食時。月乃宮家のリビングにて、ごはんのおかわり三杯目であるサクラがもぐもぐしながら言った。
「もぐもぐ……あのねナギ! サクラ、行きたい神社があるんだけどいいかなっ?」
「ん? でもこの辺りの神社は全部巡っちゃったぞ。御朱印も揃ってるしさ」
「うぅん、ちがうの。普通の御朱印じゃなくて、『神朱印』のことだよ!」
「ああ、そっか。そういえばその『神朱印』はすごい御利益があるんだよな?」
口元にご飯粒を付けたまま、「うん!」とうなずくサクラ。
「それでね! 少し離れたところの神社にサクラの
サクラの言葉に凪たちが箸を止める。月音や彼女の両親も『神朱印』自体は知っているが、本物を見たことはないのだという。それほど貴重で有り難いもののようだ。
「サクラの友達かぁ……ま、今は他に頼れるものもないし、『神朱印』のこともちゃんと知りたいしな。よし、ちょうど明日は休みだからさっそく行ってみるか!」
「わーい! ナギとはじめての御朱印めぐりー! 楽しみだねっ! ツキネのお弁当も楽しみ~~~おかわりくださーい!」
「サクラ様は居候のはぐれ神なんですから少しは食欲抑えてくださーい!」
――明くる土曜日。天気は快晴。気温もポカポカなお出掛け日和だ。
凪たちは弁当とおやつを用意して朝早くにバスで出発。電車に乗り換えてからは、自然豊かな海と山々を車窓に眺めながら伊豆半島を南下していく。休みだということもあり、車内には多くの家族連れや観光客たちの笑顔が見られた。
「あっ! あのカワイイ山、見覚えある! ねぇねぇナギ、あの山は何て言うの?」
「ああ、大室山だよ。山頂の火口跡でアーチェリーが出来るのが面白くてさ、子どもの頃に初めてやって、月姉はあれがきっかけで弓道の方を始めたんだよな」
「ふふ、懐かしいね~。それじゃあ、天城を越える前におやつの時間にしよっか。サクラ様も、大人しくしていたらお姉ちゃんの特製桜餅をあげましょう」
「おとなしくします!」
姿勢良く座席に腰掛けたサクラを見て二人が笑う。
やがて電車は広大な天城山を横目に抜けて、一時間半ほどで目的の駅に到着。そこから再びバスに乗り換えて十分ほどで、ようやく目的地へと到着した。
「ついたーっ! ここがサクラの
バス停を降り、赤い欄干を渡った先の鳥居でサクラが両手を広げて跳ねた。
凪は辺りを見回しながら進む。
「ここだったのかぁ。伊豆地方だとかなり有名な神社だよな。俺も一度来てみたかったんだ」
「えへへ、キレーなところだよね!」
「海も見えますし、素敵なところだね~。それでサクラ様、ご友神はどんな方なんですか?」
月音の質問に、サクラはほとんど考えることなく答える。
「うーんとね、すっごい美人だよっ! あとすぐに怒っちゃう優しい子なの。それからとってもキレイ好き! サクラはよく叱られちゃってたなぁ~。えへへ」
「すぐ怒るのに優しいのか? な、なんかちょっと怖くなってきたぞ……」
神様が見えるようになった凪ではあるが、そもそもサクラ以外の神様を見たことはない。神話に出てくるような過激な神様でもいたらどうしようかと、ちょっぴり怖くなったりもした。
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