第2話日記
きょうあたらしいおかあさまがきた。
ままとはよばずにおかあさまとよんでといわれた。
それとおとうともできた。
ぼくはおにいちゃんになるみたいだ。
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可愛らしい字で平仮名で書いてある。
初等部の子の持ち物が紛れ込んだのかな?
ナツキはもう一度名前が無いか確認するが、何処にも組みも名前も記されていなかった…
読めば誰のものか名前が出てくるかも…
ナツキは続きを読み始めた…
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これからおとうさまとおかあさまがいっしょにねるからひとりでねるようにいわれた。
ひとりのべっとはひろくてさびしくてさむかった。
おとうとはいっしょに寝てる。いいな。
きょうぼくがきらいなにんじんをのこしたらおこられた。あんなまずいのはたべものじゃないのに。
きょうは……
ナツキは本を一度閉じる。
「これって…」
眉毛を下げて本を見つめると本を持ったまま机に腰掛けた。
どうやらこの子は新しくきたお母さんと連れ子の弟と上手くいって無いようだった。
その事をこの日記に書いて吐き出しているのだろう。
「これは…家には置いとけないね…」
ナツキはペラペラと最終ページを開くと…
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きょうはごはんを一人で食べた。
ぼくのかおはいんきらしいいっしょにごはんをたべるとおいしくなくなるみたいだ。
ままにあいたいな。
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ガタンっ!
勢いよく立ち上がると
ダンッ!
机を思いっきり叩きつける!
「何やってんだ!この母親は!小さい子を一人で寝かせて、一人で食べさせるなんて!」
フツフツと怒りがわいてくる!
ナツキは日記を見つめると…最終ページの下に字を書きはじめた。
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はじめまして
かってに日記を見てごめんね。
でもがまんできなくて…もしたえられなかったらいってほしい。
ちからになるからね!
ナツキ
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書いてみて後悔する…いつ書かれたかもわからない日記にコメントを書くなんて…でも日記の子を一人にしたくなかった。一人じゃないよって言ってあげたかった。
もしまだつらい思いをしてるなら名前を聞けば助けてあげられることがあるかもしれない!
ダメ元だ!
ナツキはパタンと日記を閉じると元あったロッカーの上に戻しておいた。
次の日もナツキは補習に来るといつも席に座る。
「なつき、誰もいないんだもっと前に座ったらどうだ?」
先生が聞くと
「私の席はここです。それぐらいいいでしょ?ここなら風も通るし…」
パタパタと下敷きで扇いでいると
「まぁ、好きにしな…じゃプリントを渡すからまたやっておけよ」
「はーい」
ナツキは直ぐにプリントに取り掛かった!
「おっ珍しくやる気だな!頑張れよ」
先生がいつもなら文句を言うナツキが積極的にプリントに向かった事に驚いていると
「いいから職員室行ってくださいよ、真面目にやりますから」
「はいよ、よろしくな」
先生の足音が廊下に響いて遠くなっていく…ナツキはプリントをいつもの半分の時間で終わらせると…後ろのロッカーに向かった…
「いやいや…無いって…だって夏休みだもん、学校に来てるのは私くらいなのに…」
そうは言いながらもあの日記を手に取ると…
「返事が無ければ、いい事だよ…もうこれは過去の事なんだもんね」
自分に言い聞かせながらページをめくっていくと、あのページを開いた。
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ナツキはじめまして。
どうしてこの日記を見つけたのかふしぎだけどなんかうれしかった。
またへんじくるかな?
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返事がきた!
ナツキは複雑な思いで返事を見つめる…返事が来たって事はこの子は今傷ついてるって事だ…
しかも、この夏休みの最中に学校に来ているのだ…
ナツキはすぐさま返事を書いた。
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きみがおこってなくてよかった。
かってに日記を見てへんじを書いてしまったから…
でもうれしいって書いてくれてホッとしたよ。
またへんじ書いてもいいかな?
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うん、ぼくナツキのへんじがきてるか気になってなんども日記を見ちゃったよ。
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わたしはしばらくはひまだからへんじを書くよ。
ちなみにキミのなまえは何かな?
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ぼくはアレクです。
ナツキしばらくってどれくらい…ずっとつづくといいのになぁ
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アレクへんじありがとう。
アレクがいやになるまでつづけるよ。だから元気だして。
それより今日のできごとでもかいてよ
わたしは今はべんきょうしてるよ、あついなかのべんきょうはたいへんだよね
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ナツキはえらいね。ぼくはべんきょうはきらい。
できないとおこられるからでもナツキががんばってるならぼくもがんばってみようかな
それにアレクってなまえひさしぶりによんでもらったきがする。うれしい。
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「アレク…名前も呼んでもらえないの…」
ナツキは日記を棚に戻すと机に座り先生が戻るのを待った。
異世界交換日記 三園 七詩【ほっといて下さい】書籍化 5 @nawananasi
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