異世界交換日記

三園 七詩【ほっといて下さい】書籍化 5

第1話本

「あーあ、折角最後の夏なのに…。」


ナツキは机に突っ伏して誰も聞いてくれない愚痴をこぼす。




5月のGWにハメを外しすぎてしまい…調子に乗ってスピードを出しすぎた自転車のブレーキの調子が悪い事を忘れて、走り出した先にオートバイが突っ込んできて盛大に突き飛ばされた。


感じたのはこれまでの事…


あー…これは不味いな。


冷静にそう感じた、次に思った事は彼氏でも作っておけばよかったな…と…まぁ思っても出来なかったからいないんだけどね。


次に気が付くと見たことも無い天井を見つめていた。


白い…


「このバカ!やっと気が付いた!」


いつものように怒鳴られる声に横を見ると初めて見る母の泣き顔が見つめていた。


凄い事故だったらしいが両足と腕の骨折と頭を何針か縫うぐらいですんだようだ、吹き飛ばされた先が畑だった事で土がクッション代わりになってくれたらしい、脳を検査しても異常はなく家族はひと安心していた。


しかし手術とリハビリで二ヶ月近く入院する事になりやっと退院したと思ったら直ぐに夏休み…、しかし休んでた分の勉強と単位の為に夏休み通学。


みんなが夏休みを堪能してる中一人寂しく学校に来ていた。


「なつき~ここまで進めとけ、わからない所は後でまとめて説明してやるから」


先生がナツキにプリントを渡すとさっさと涼しい職員室へと戻って行った…。


「なんだよー職員室で勉強させてくれたっていいのにー!熱中症になったらどうすんだー!」


ガラガラ~


げっ!まだいた…。


先生が扉を開けてナツキを見ると、ニヤッと笑い


「水はいつでも飲んでいいからなー」


じゃ!と今度こそ出ていった。


ナツキはため息を付くとプリントに目を通した…。


暑い中勉強以外にする事も無く、黙々とプリントを片付けていくとパタッと集中力が切れた。


「あー!わからん!もー先生早く来てー!」


もうやだ!と冷たい机におでこをくっつける。


「あーあ、折角高校の夏なのに…」


ゆらゆらと揺らめくカーテンの向こうから涼しい風が入りナツキの頬を優しく撫でる、外では野球部の暑苦しい声が響いていた…。


しばらく風に撫でられながら休息して、思いっきり伸びをすると後ろのロッカーの上の乱雑に置かれた本に手が当たる。


「あっ…」


手が当たり本かがバサッと崩れてしまった。


仕方なしに立ち上がり本を並べ直すと、一冊の本が目が止まる…


手に取り見るが…表紙には何も書いてない…臙脂色の古ぼけた洋書のようだった…


(題名もないけど…なんの本?)


パラパラっとページをめくるが中は空白のページが広がっていた。


「ん?なにこれ、本じゃ無いのかな?」


ナツキは1ページ目を開くとそこには文字が書いてあった…。


「これ…日記だ…」


周りを見るが誰もいない…ナツキは一行目を読み始めた。

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