第8話 第三節 火災報知器誤作動の真相
「では、二つ目の疑問です。火災報知器は何故、誤作動を起こしたのか。これについてはまず、実際に誤作動した火災報知器の部屋にいた紀子さんにお伺いします。状況は、どうでしたでしょうか?」
紀子に振る。紀子はその時の状況を思い出しながら答えた。
「はい、たしかに、天井に付けてある火災報知器が、誤作動しました。突然、天井辺りから凄い音が聞こえたので、びっくりして天井を見上げました。パーティー用の料理を作ってはいましたが、別に作動するような煙を出してはいなかったので、おかしいなとは思いました」
「ありがとうございます。ここにいる皆さんは、キッチンから聞こえた火災報知器の音に驚き、各々いた部屋を飛び出し、様子を見に伺ったでしょう」
数人の頷く姿を目に収めた。
「では皆さんにお伺いします。誤作動を起こした火災報知器の音は、本当に火災報知器の音だったのでしょうか」
「……おい、それはどういうことだよ」
すかさず荒井が前に出るように発した。彼も、驚いて部屋を飛び出したうちの一人だろう。
「つまりこういうことです。皆さんは、本物の火災報知器の音を、聞いたことがありますか?」
先ほど言葉を発した荒井をはじめ、皆が固まった。
「これは、火災報知器の誤作動ではない。決まった時間に、火災報知器が誤作動したかのように思わせるための細工だったんです」
「なるほど。そういうことだったのですか。きちんと点検をしているはずでしたので……」
紀子は納得したようだ。
「では、何故キッチンである必要があったのか。それは、最も火災報知器が鳴る場所として信憑性が高いことと。それともう一つ、ある部屋が、キッチンからは死角になるからです」
「死角……」
鈴城が呟く。どの部屋がキッチンから死角になるか、頭の中で部屋の見取り図を描いているようだ。
「あともう一つ。何故、パーティーが始まる三十分前に火災報知器が鳴ったのか。それは、ある物の効果がタイミング良く発動されるために、夏鈴ちゃんのジュースのコップに仕込む必要があったからです」
皆が納得したように頷く。そう。このタイミングで、夏鈴ちゃんの使用するコップに、睡眠薬が仕込まれた。
「あとは、誤作動だとすでにわかっているから、慌てる必要などなく、三階で遊んでいる夏鈴ちゃんを呼びに行ったんですよね?」
私は、ある人物へと視線を投げた。
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