第7話 第二節 再び娘の部屋へと向かう
私は巫部さんとともに、二階にいる娘の部屋へと向かった。もちろん、紀子と一緒である。紀子の様子は、巫部さんの登場をきっかけに、さらなる変化を遂げた。まるで伝説上の生き物に出会ったかのような珍しい表情をした後、急にうっとりとした表情へと変わった。
……全く、紀子はどれだけ男に飢えているのだろう。紀子という女性が酷く恐ろしい生き物に思えてきた。
私たちは再び娘の部屋へと入り、ベッドで眠ったように横たえる夏鈴ちゃんを見た。巫部さんは紀子に許可を取り、顔にかけられた白い布をそっと取った。
「これが、夏鈴ちゃんですか」
巫部さんは、独り言のように呟いた。そして、彼女の瞳、鼻、口の形などの形状を隅々まで眺める。これから、彼女の出生、本当の両親が明らかになるかもしれない。その儀式のような所作を、私と紀子は少し離れたところから見つめていた。
巫部さんが、左手で夏鈴ちゃんの顎に触れ、そっと鼻を口に近付けた。どうやら、口の臭いを嗅いでいるようだ。
「うーむ、そうか……」
「巫部さん、何かわかりましたか?」
「うむ、毒殺だろうが、口からは臭わない。恐らく、大量の青酸カリを服毒しているのだろうが……」
巫部さんは、あくまで捜査として冷静に対応しているのだが。口の臭いを嗅ぐという所作でさえ、まるで眠りの森のお姫様を目覚めさせる王子様のような振る舞いに感じた。しかしその感想は不謹慎であるため、急いで思考を頭の隅に逃がす。
「……となると、やはり毒は……」
「うむ、夏生くんの考えている通りだと思うよ。鑑識の結果を心待ちにしよう」
よかった。どうやら、私と巫部さんの毒殺方法に関する推理は一致したようだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます