第2話 八節 主人の証言
どうも。娘のために犯人探しに尽力いただき感謝する」
「礼には及びません。私も主人に大変にお世話になっている者ですから」
「ご謙遜を。私もできることがあれば協力する」
「助かります。ありがとうございます」
――まずはどの一件を主人に放り込むべきか。
「ではお伺いします。夏鈴ちゃんは、奥さんとの子ではないとお伺いしていますが。それは本当ですか?」
主人は若干の間を置き、こう答えた。
「いえ。私との子ですが」
「おや? そうですか。実は奥さんからその話が持ち上がったのですが」
――私は腕組をしながら熟考する。おかしい。なぜこの夫婦の証言は食い違っているのか。
「もう一つお聞かせください。お仕事が忙しいとのことですが、いつも何時ごろに帰宅されるのですか?」
「仕事先がやや離れていることもあり、帰りはいつも翌日へ回ってしまいます」
「なるほど。仕事自体は何時に終わっていますか?」
「仕事はいつも二十二時頃に終えています。そこから支度をして車に乗って帰宅します」
「なるほど。帰ってくるころには家族の皆さんはお休みされていますでしょう」
「そうですね。娘はすでにベッドで寝ていますが、紀子はたまに起きて私のことを待ってくれています」
「そうですか。最近奥さんを帰宅時に見かけたとき、どのような印象を受けましたか?」
――主人は少し何かを思い出したように呟いた。
「……少し、悲しい目をしていたような気がします」
以上が、大邸宅の一室で起こった事件に関係した者の証言である。
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