第2話 六節 昨日からこの家に泊まる女性の証言
鈴城に案内され、三階にある娘の遊び部屋へやってきた。その部屋には、若い女性が一人、散乱したおもちゃの中で脚を抱えて座っていた。まるで、遊びに疲れた子どものようである。
「あの、すみません」
「……はい」
少し遅めのテンポで返答があった。目は虚ろで、私をあまり認識できていないようだ。
「お辛いとは思いますが、どうしても協力していただきたくて。夏鈴ちゃんについて、詳しくお話をお聞かせ願えませんか?」
いつもよりも優しい声色で、彼女、
「はい。私はパーティーの準備のために、昨晩はこの家に泊まっていました」
「なるほど。一つお聞きしたいのですが、夏鈴ちゃんの具合が気になっていまして。あなたは前日からこの家にいるとなると、当然夏鈴ちゃんとお会いしていますよね?」
「はい。ですがあの子、元気そうでしたよ?」
怪訝な表情で答えた。
「ほう、そうですか」
「昨晩、あの子と一緒におままごとをしました。顔の表情も元気でしたし、明日のパーティー楽しみだなって嬉しそうにはしゃいでいました」
「そうですか。となると、具合が悪くなったのは死ぬ間際ということになりますね」
「そうですね。でも、突然どうしたのでしょう」
彼女の怪訝そうな顔は変わらない。その表情は、何故娘が急に具合が悪くなって亡くなってしまったのかという疑問にも取れるし、何故、徐々にではなく、急に具合が悪くなったのか。にも取れる。
もし後者の場合だったとしたら。これは、警察の鑑識の結果を待つしかあるまい。
何やら非常に恐ろしい手口で、殺されたのではあるまいか。
いよいよ、残すは主人と紀子のみとなった。
主人は取り込み中のようなので、
先に紀子と話をしておこう。
紀子には不倫の嫌疑がかけられている。
――何か、ヒントを漏らしてはくれないだろうか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます