第2話 四節 怒れる男性の証言
「すみません、お話を伺ってもよろしいでしょうか」
「……ああ。いいけど」
明らかに何かに怒っている。
「あの、何かあったんですか」
「ああ。大アリだよ」
彼は
「僕はあいつが怪しいと思う」
いきなり鋭い声で言い放った。
「あいつとは?」
「Bさんだよ。この家に来て早々、この家の主人ではなく、娘さんに挨拶に行ったんだ」
――ほう。随分とBさんを敵視しているようだ。
「その方は夏鈴ちゃんとは歳が近いのですか?」
「いや、僕と同じくらいなはず。主人に招かれた以上、先ずは主人に挨拶へ行くのが礼儀だとは思うがね」
「なるほど。ところで、あなたはなぜ、最初に挨拶したのが主人ではなく、夏鈴ちゃんだとわかるのですか?」
「僕は主人と今後の経営方針について軽く立ち話をしていたからね。そしたら玄関のドアが開き、あいつが入ってきたんだ。あいつは僕と主人の横を通り過ぎ、その先にいる娘さんに挨拶した。やけに仲が良さそうだった」
それにしても、あいつという呼び方が気になる。一体何が彼をそこまで思わせるのか。それほど、主人に対して畏敬の念を抱いているのか。だとしても、主人と血の繋がった娘と仲が良いことは、とくに問題ないのではないだろうか。と思ってしまう。
「まあ、君たちが込み入った話をしていると踏んで、夏鈴ちゃんのところへ行ったのかもしれませんからね。それだけでは断言できないでしょう」
一旦、思ったことを口にする。まだ彼は不機嫌なのか、どこかを睨みつけている。
「そうかね。だとしたらもう一つ、気になる点がある」
「ほう」
「あいつ、主人の奥さんとできているかもしれない」
「なるほど。あとで詳しくお聞かせください。ありがとうございます」
もしこの証言が本当であれば、たしかにそのBさんは、彼にとって敵……という関係性も考えられるだろう。その敵というのは、具体的に、商売敵という意味なのかどうかは、Bさんに聞いてみればわかるだろう。さて、Bさんとは誰なのか。
ふと私は、あることが気になった。
――娘はいつ、どのように亡くなったのか。
まさか、蝋燭の火を吹き消すタイミングで急に死が訪れるとは考えにくい。
先ほどの小石川の意見のように、毒殺された可能性は高いのだが。
ならば、どのように仕込まれたのか。どこで服用してしまったのか。
となると、気になることは、今朝の彼女の体調の状態だ。
誰か、知る者はいないだろうか。
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