第2話 二節 窓際の男性の証言

 窓際に座り込む男性は、髪に少し白髪の混じった、四十代前半くらいの男性といった印象だ。目はクリっと大きめだからか、それ以外のパーツはシャープながらも、温厚な雰囲気を纏っていた。

「あの、すみません。今、お話してもよろしいでしょうか」

「ええ、大丈夫ですが……」

「私はこういう者です」

 常にポケットに忍ばせている名刺の束から一枚取り出し、手渡した。目の前の男性はそれを受け取ると、私の肩書に少しばかり驚いたようだ。すでに大きな目がさらに大きくなる。

「これはこれは。探偵さんでしたか。私の名は、佐々木拓郎ささきたくろうと申します。ただのしがない庭師でございます。この度は、夏鈴ちゃんのことでいらしたのですね。どうか、あの子を、救ってやってください」

 途端に懇願するような表情へと変わった。

「では、少しお力をお貸しください。少しでも大丈夫ですので、事件当時気になったことがあれば、教えていただけませんか」

「たしかパーティーが始まる三十分前くらいだろうか。火災報知器の誤作動が起きたんだ」

「ふむ、誤作動ですか」

「ああ、だよ。皆驚いた顔をしていたよ」

 何故、火災報知器は誤作動を起こしたのだろう。

「庭師として、この家にはどれほどの頻度でいらしていますか?」

「はい。庭が荒れだす頃合いですので、大体月に一回程度でしょうか。いつも主人からご依頼を受けて参上しております。ただ今日においては、誕生日会をお祝いするために、呼ばれました」

 佐々木さんは大きくため息をつく。その息には、「どうして死んでしまったんだ」と娘に抱く切ない感情が込められていた。

 佐々木さんとの会話を終え、別の人物と話をすることにした。さて、次の人物だが。ふむ、どうやら、キッチン付近で主人と話し込んでいたのが終わったようだ。彼に、話しかけてみるとしよう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る