第5話 毒の正体
「さて、次の謎といえば……」
家族写真の件がかなり気になるところだが、まだ解明しないといけない別の謎が残っている。それは、娘の死因となった、毒の正体だ。
こればかりは毒に関する知識もないため調べようがないか……と言いたいところだが、常日頃巫部さんに「持ち歩いておきなさい」と携帯されているのが、毒に関する簡単なメモだ。毒の種類、匂い、効果、効果が出るまでの時間等、色々と記載されている。毒に関する知識としてよりかは、こういった情報をもとに、ある程度の毒の目星をつけておけば、進まなかった推理も進むだろうという目的が強い。
早速開いてみる。様々な毒に関する文字が目に飛び込んでくる。
シアノ何とか、何とかシアンと、似たような言葉が並ぶ中、ようやく見慣れた名前に行き着いた。青酸カリである。
説明にはこう書いてある。
・実は繊細(生ものなので、新鮮さを失うとすぐに無害となる)
・致死量が意外と多い
・無味無臭ではない
と書かれていた。そうなのか。よく青酸カリはミステリーで使われる毒物だと思っていたが、意外と使い勝手が悪そうだ。
……ただし、今回の場合はどうだろうか。殺されたのは六歳になったばかりの娘で、味なんぞあまりわかったものではない。例えば、オレンジジュースなどに混ぜてしまえば、いとも簡単に飲んでしまいそうだ。子どもは、乾杯のルールなどは気にしない。すぐに飲んでしまうだろう。
問題は、いつ毒が仕込まれたかだ。誰が仕込んだのかはわからないが、堂々と飲み物に仕込めるほど、隙があったとは思えない。来客用スペースには、常に何人か、娘の周りを取り囲んでいただろう。
あと気になるのは、毒が効果を発揮するまでの時間だ。蝋燭の火を吹き消す瞬間に、生命の灯火が消えるように、息を引き取るなど、そんな偶然があるだろうか。私はずっと、何故か多く刺さっていた蝋燭のことが気になっている。
……なるほど。もしかすると。娘はその瞬間に息を引き取ったのではなく、そう見えるような現象が発生したと仮定してみる。もし、蝋燭の火を消す度に吸い込んだ空気と一緒に、何か別の成分を吸い込んでいたとしたら。例えば、突然気絶するような成分。そうすると、多すぎた蝋燭の謎も解明できる気がしてきた。
あとは、毒を仕込むタイミングだが……。と、ここでふと思い出す。そういえば。火災報知器の件。あれはどうだろうか。あの一件により、もし来客用スペースから人が別の部屋に移動したのなら。毒を仕込むタイミングは十分にありそうだ。
ほう、こうやってあらゆる謎は繋がっていくのか。私は、少しずつ全貌が明らかになっていくのを感じる。しかしまだ解明ははじまったばかりだ。ここからは特に慎重に、進めていこう。
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