4:冬
季節は12月も、もう終わりに近づいてきた頃のこと、街を歩けばカップルがイルミネーションに彩られた街の中を手を繋いで歩いている姿ばかり。
去年のクリスマスは何事ともなく家で1人クリスマスをすごしたが、今年は違う。今隣には僕が、絶賛片思い中の美波先輩がいる。
「イルミネーション綺麗だね〜」
「そーですね、この日ってこんなにイルミネーションがついてるんですね」
「え!?もしかして今まで1回も来たこと無かったの!?」
「え、は、はい。恥ずかしながら……」
「1回も」ということに先輩はすごく驚いているようだった。それもそのはずだ。僕はもう高校2年生、友達や恋人と普通ならば来るはずだ。
しかし、今までぼっちを貫いてきた僕にはそんなイベントなど来るはずもないのである。
「先輩は前にも来たことあるんですか?友達とか彼氏とかと……」
自分で言っていて胸が苦しくなる。好きな人の元カレの話なんて本当は、1ミリたりとも聞きたくなんてない。
「どっちもあるかな〜、でもその人とはすぐ別れちゃったんだけどね〜」
「そ、そーなんですか、残念ですね」
覚悟はしていたつもりでもやはり心には来る。この心臓を握り潰されるような苦しみ、もう何度も味わってきた。
学校で先輩とすれ違う時、一緒に歩いていた男子に強烈な嫌悪感を覚えた。学年が違うからあまり学校ないじゃ顔を合わせなかったけど、それでもたまにすれ違った時のその光景はとても苦しいものだ。
好きな人が自分以外の男子と一緒に歩いているのがすごく許せなかった。
″これは嫉妬・恋煩い″
以前先輩も言っていた。僕が先輩を「好きなんだ」とそう確信した時からいつもその言葉が頭の中でぐるぐると回っているような気がする。
「でも、なんでそんなこと聞いたの?」
「いえ、理由はとくには」
「え~、何その含んだ言い方。気になるじゃんww」
「な、何でもないですって、ほんとに」
笑みを浮かべながらぐいぐいと聞いてくる先輩の顔はとてもきれいで、とてもかわいかった。その笑顔を見て僕は心の中で一つの思いを決意する。
”今日絶対に先輩に告白しよう”
そう決意をした後。安い店ではあったが二人で夜景の見える店で食事をした後、クリスマスに彩られたモールの中を二人でショッピングをした。
楽しい時間というのは早く過ぎてしまうもので、先輩を送りに駅まで一緒に行った。あたりにもう人はほとんどおらず、次の電車までまだ時間があったので、駅前の広場にある木の下のベンチに座って少し話をすることになった。
「今日は楽しかったね~」
「そうですね、今までのクリスマスで一番楽しかったです」
「私にとっては高校最後のクリスマスだからね~君と一緒に過ごせてよかったよ」
「あ、あの。先輩、伝えたいことがあるんですけど……」
決意したつもりなのに、いざ伝えようとすると足が竦む、手足が震える、指先が冷たい、心臓の鼓動がうるさい。
「なに?つたえたいことって?」
「えっと、僕は先輩のことが……」
伝えようとするほど、心臓の鼓動が早くなるのがわかる。唇が震えているのが自分でもわかる。
『逃げたい』でも、先輩はきっと気付いているだろう、僕のこの気持ちに……
それでも先輩は何も言わずにこちらからの言葉を待ってくれている。
”伝えなければ、伝えなければ前に進めない”
「僕は先輩のことが、ずっと好きでした。僕と付き合ってください」
僕の言葉を聞いて先輩はすごく驚いていた。それもそのはずだ、今までの僕では女性に告白なんて考えもしなかった。
きっと、僕はこの人に変えられたのだろう。どこまでもまっすぐ僕を見てくれる。今までそんな人現れなかった。だからだろうか、僕が先輩を好きになったのは……
”でも……”
「気持ちはすごくうれしい。でも、ごめんなさい。」
そう言って先輩はベンチから立ち上がり、一人で駅のホームへと向かってしまった。その後姿を僕は黙って見つめることしかできなかった。
こうして、僕の初恋は儚くも散ってしまったのである。
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