3:秋

季節は秋になりあの夏のような蒸し暑さは消え冬に向けて少し肌寒くなる。


高校二年生の秋と言えばみんなは何を思い浮かべるだろう……


一般の普通の人ならば【修学旅行】と答えるのがセオリーなのではないだろうか、高校生活3年間で最大の一大イベントなのだからそれは当たり前だ。


しかし、僕はと言うとあまり修学旅行というものを楽しめなかったと思う、友達がいなかった訳でもない、誰かにいじめられていた訳でもない、頭の片隅に何かモヤモヤした物がありそれが気になって思い切り楽しめなかったのだ。


その事を先輩に伝えると……


「恋煩い??」


「なんでそうなるんですか……」


「いやだってさ頭から離れなくて、モヤモヤするとかさ、まさにそれじゃん」


「いや、まぁ、そーですけど」


「ていうか君、本を良く読んでるんだからわかると思うんだけどな」


呆れた?残念?みたいな表情を浮かべながら言う先輩に、聞いた分際ではあるが少し申し訳なくなってくる。


「そう言えばさ、君いつも何読んでるの?」


普段全くと言っていいほど本に興味を示さない先輩だが、今日は珍しく本に興味を持ったようだ。


「秒速〇センチメートルっていう小説ですよ。恋愛小説です」


「へぇ〜恋愛小説か、私もなにか読んでみようかな。なにかおすすめなのある?」


恋愛小説はだいたい読んできたが、小説素人の人が読んでも面白いと思える本というと、困るものだ。


結局悩みに悩んで選んだ本は

→君の〇〇を食べたい

→君に〇するなんて、ありえないはずだった

→〇のような僕の恋人


「この3つなら比較的読みやすいと思いますよ」


「あ、1つめは聞いた事あるかも!図書室に置いてあるかな?」


「確かありましたよ、あそこの棚だったと思います」


図書室の奥の棚を指さすと先輩は早々とその棚に行き本を探しはじめた。


探しはじめて少したった時ふと先輩の方を見てみるとまねきねこのように僕を棚の方に招いていた、招かれるがまま先輩の方に行き話を聞くと、どうやら少し高いところにあったらしく取ってほしいとの事だった。


「この高さくらい脚立で撮ればよかったんじゃないですか??」


ヤレヤレと少し嫌味っぽく言うと……


「やっぱこういうのは男子にとってもらわないと、今の海斗くんはポイント高いぞ!!」


「はぁ…仕方ないですね。ポイントに免じてそういうことにしておきましょう」


「おや?今日はやけに素直じゃないか(ニヤニヤ)」


「先輩のかわいさと、ポイントに降参しただけですよ」


「か、か、か……」


隣で顔を真っ赤にしてしどろもどろしている先輩を見て僕は自分がさっき言った発言を思い返し直ぐに訂正する。


「いやあの可愛いって言うのはその、先輩の仕草であって決してその先輩が可愛いということでは、そりゃ可愛いとは思いますけど、そういうことではなくて……」


何を言っているんだ僕は……そう思いながらもダラダラと言い訳をし続ける。


「分かったから‪w私もいきなり言われて戸惑っちゃっただけだから!」


「そ、そーですよね!すみません紛らわしい事言ってしまって、あはは……」


「なんか私もごめんね、あはは……」


その後数分沈黙の時間が流れ昼休憩終了のチャイムと共にお互い図書室から出て各教室に戻った。


先輩の帰った図書室で海斗は心の中にひとつの思いが浮かび上がってきた。


「(先輩、僕はやっぱり先輩のことが好きです)」










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