第13話

ここは荒れた地

生き物の消えた不毛の大地

枯れた風が吹き

空と大地で色の分かれる地

ここは戦場として最適だった

己と敵とが向き合うだけの場だから

ここは戦場として最善だった

他に傷付く者も物もなかったから

ここは戦場として最高だった

精霊にも妖精にも見捨てられたはずだったから


ホーンの音が戦いの始まりをつげ

互いの雄たけびが空気を震わせた

風を切る音

金属のぶつかる音

踏まれる水音

生と死があちらこちらで交差している

それが戦争だった

しかし人は知らず忘れていた

なぜこの地が荒れた土地なのか

なぜ生き物が消えた大地なのか

なぜ戦場として選ばれたのか


戦争はどこが勝ったかどこが負けたかなど

わからないほど荒れた

敵と戦っているのか

味方と戦っているのか

わからなくなっていた

大地が肉に埋め尽くされ赤く染まった

無事な者は一人もいないように見えた

そして大地は本来の機能を動かす

生きている者も死んでいる者も一瞬にして

何かに飲み込まれて

そこに不可思議なモノが現れ

森が産まれた

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