第3話

同じリズムで時計の音がする

ひと所に集まった人々のざわめきが

時計の音と共におさまり

砦が静けさを増す

「点呼」

静けさのなかに一声ひとこえ

答えるかのように

ふぞろいながら声が数を刻む

「第1大隊105名確認。総員無事」

「第2大隊98名確認、各員無事。

2名それぞれ左足と右腕の負傷、復帰の見

込みなし、帰郷の手続き中。」

「第3中隊54名確認。内、20名の軽傷報告

有り。他、無事。」

・・・

・・

順に上がる報告が耳を打つ

今日までの己の負傷も

昨日の友の死も

森に勝つため

だから数の報告後に

読み上げられる名前を

その名前に続く功績を

功績に向けられた賛辞を

おのれの中に刻み込もうと

砦中が静かに聴いていた


今この時も森から出ようとするモノが

向かってきているだろう

だから皆で剣をとり

砦の外へ向かわなければ

砦を越えて行くこと止めるために


しかし

命を落とした戦友の遺体を

故郷の家族へと届けられぬのなら

戦友が命を落としたことを

故郷の家族へと伝えることさえ

ままならぬのなら

誰かが弔ってやらねば

森へといざなわれないように

覚えていてやらねば

勇敢だったことを

友であったことを


友の家族へと己れが伝える為に


そして戦い抜いて

森に勝ち

生きて帰ることを誓うのだ

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