「亮弥と喧嘩した…」




ポツリと呟いた晴樹から出た名前はやっぱり亮弥の名前で。






正直、ああそう、としか感想が出てこない。




久しぶりに会った元恋人の話題はその元恋人の現恋人の事でしかなく








(…何にも変わんねーな)






特に言葉にすることなく透は、自分の為に淹れたインスタントコーヒーを啜る。








「なんだ、お前らまだ続いてたの」








漸く出て来た言葉は、そんな言葉で








可愛くねーななんて自分自身でも思いながら相手を見つめる。








「で?」




喧嘩の原因は?


顎先を晴樹に向けて、先を促す。








少し戸惑ったような晴樹の表情に、透は眉を顰める。






「えっ、…あぁ」


言い淀んでからポツポツとこれまでの経緯を晴樹は語り始めた。








晴樹のバイトのこと


亮弥の大学のこと


親のこと


友達のこと


将来のこと








同じような年代が抱える悩みなんてもんは、どれも大差なく。






毎日小さな悩みが生まれては消えて行く。




そんなものはほんの些細な問題でしかなく、大抵は自分で解決出来るものであるわけで。








今、透の目の前に居る晴樹も自己解決する能力を当然持っている。




彼の恋人である、亮弥に関しても






ーー男にしては華奢な体格のせいで、


生来の優しい性格のお陰でそうは見えないかも知れないがーー








しっかりとした考えの上で行動しているわけで。

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