「透!」




…気付くなと思った刹那、その相手に気付かれる。






街燈に照らし出された相手、自分でも驚くぐらい冷静に透は相手を見据えることが出来た。








「晴樹…」


小さく俯いてから相手の名前を呼ぶ透の顔には笑みが浮かんでいる。








(どうしていつも、)






(タイミングが悪い時に限ってこの男は現れるんだろう…)








久しぶりに合う晴樹は、少し筋肉が付いたようで日にも焼け、








僅かに少年の表情を残すものの精悍な顔立ちになっていた。








(3年、だもんな…)




透の部屋で、相変わらず我がもの顔で寛ぐ晴樹にインスタントコーヒーを差し出しながら、ふとそんな事を思う。






高校を卒業して、3年。


懐かしいなんて感情は持ち合わせていない。




ただ、目の前に居る晴樹を思って辛いだけの時間だった。








晴樹だってそんな感情はないようで






"久しぶり"だとも"元気してたか"なんて言葉さえもない。






時間だけが経っただけで何も変わらない。


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