人を愛すること。








それによって人は強くもなれるし、弱くもなる。










透は晴樹とのことで臆病になっている自分に気が付く。








晴樹との関係はもの凄く短い。




たったの30日間。








それでも彼は透に忘れられない心の疵を残して行った。








そして、笹原はその疵を癒してくれた。










(けれど、)










(今俺の尻に突っ込んで痛みしか産まない不毛なセックスをして居るコイツはなんなんだろう)






ただの行きずりの男、それはそうなんだろうけど。








ほんの数か月前の透は、この男にもたらされる快感に酔って居たことも事実で。














「お前、なんか有った?」






行為後、いつもならそのまま帰る彼がベッドの上で煙草を燻らせながらそんな言葉を向ける。




驚いて視線を彷徨わせたあと、透は小さな笑いを零してそれを誤魔化した。








「まっ、いいけど。なんか艶っぽくなってるし?」






「そんなお前ならまた抱いてみたいね」








煙草の火を灰皿に押しつけて、透の髪へと口付けを落として出て行く彼の背中を透はぼんやりとした視線で見送る。








気怠い身体とその意識を柔らかいベッドの上に深く投げ出す。








最悪な夜だ。






よくよく考えればただのヤキモチなんだと、透は悟った。








彼以外と身体を重ねても身体も心も満たされない。






それに気付いてさらに葛藤する。








彼を心から求める自分と、ただの身体だけの関係だと撥ね除ける自分との狭間で












悶えながらいつの間にかその日は眠りについた。

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