学校からの帰り道、ぼんやりと駅へと歩く透の耳に聞き覚えある声が聞こえたような気がして、足を止めると透はゆっくりと辺りを見渡した。






その視線の先、視界に飛び込んで来たのはいつかのサラリーマン風の男。








にこやかに微笑んで、手なんかを振っているその男。






飄々と悪びれる様子のない男の態度に、僅かに気を取られた間、彼は透へと近寄る。






「こんにちは」




「…どうも、」






まともに挨拶を交わす気にもなれずに少しだけ視線を絡めてはすぐに逸らす。






そのまま駅の改札を通り抜けようとする透の腕は彼の腕に捉えられた。

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