再び、取り戻す―(4/26)
※~[カリオス今田]視点~※
「ねーねー、トロちゃんの説教まだ終わんないの~?」
「僕が知るかよ」
「0点を取ってしまったんですから……仕方ありませんよ……フフフ……」
俺は今、食堂で夕食を取っていた。
「トロちゃんがお菓子の豆知識聞いてくれないと富士子つまんない~」
「僕が知るかよ」
「誰も聞いていなくても話しているじゃないですか……」
相変わらず、こいつらはマイペースだ。
「っていうか、なんでピーラーだけ先に戻って来てるわけ? 差別?」
「僕が知るかよ」
「あの教師は……無類の女好きなんじゃないですかね……」
正解率では問題がなかったからだろ。
「そういえばトロちゃんって、アレでも女の子だったのよね」
「僕が知るかよ」
「よく一緒にお風呂入ってるじゃないですか……またベストショットを期待していますよ……」
やめんか!!
「あーあ、お腹空いたわ。あと何回おかわりすれば気が済むのかしら」
「僕が知るかよ」
「無視しましたね……」
反抗しろよナルシー。
「あ、そういえば……カスさん……」
「……あ?」
マッケンは、その辺にいる女子をカメラで撮影しながら俺に問いかけた。
「いつもクラスメイトが危険な目に遭っていたら助けに行くのに……どうして今日はトロさんを助けに行かないんですか……?」
ギクッ。
「んー……いや……それは……。あいつなら、別に俺が助けに行かなくても自分でなんとかできるだろ。強ぇんだし」
テキトーにごまかしておこう……。
「へー……そうですか……ほー……そうですか……」
「な、なんだよ」
「いえ、別に……。面白くないと思っただけです……」
「なんじゃそりゃ……」
本当は、別の理由がある。
あいつが体育の時に体調を崩したりなんかしたから、それが気がかりで何度も声をかけていただけなのに、
〝もぉ!! しつこいです!! 大丈夫だって言ってるじゃないですか!!〟
と、怒鳴られたのが癪で、今は距離を置きたいだけだ。
……ったく、せっかく人が心配してやったのに、怒鳴らなくてもいいじゃねぇか。
つーか、マジで寂しくて夜眠れてないのか?
俺はそんな経験一度もねぇぞ、小学生の頃でも。
アイツも一応は女の子ってわけか。
ま、仕方ねぇな。
「──モルモルぅ~!!♪」
「あ、マリマリ……」
俺達が食事を終え、食堂から出ようかと席を立ったその時、チビ助がやってきてマッケンに飛びついた。
「モルモルつ~かま~えた☆」
「どうしたんですか……? まだ約束の時間ではないと思うのですが……」
「真理、待ち切れなくて迎えに来たの~!」
「ああ、そういうことですか……マリマリは可愛いですね……」
「えへへ~♪」
こいつらますます仲良くなってるな……。
だからあいつがマッケンに嫉妬深くなってたのか。
「……おい、チビ助」
「!!」
俺が声をかけると、そいつはマッケンの背後に隠れて、こちらを睨んできた。
あの意味不明な気絶パワーがなくなった今では、そんなものまったく怖くない。
「お前、最近あいつと遊んでるか?」
「……あいつって……誰……」
「お前の姉貴だよ」
「……お姉ちゃん……? お姉ちゃんとは……遊んでない……」
ホントにマッケンづくしかよ。
「たまにはあいつとも一緒にいてやれよ。寂しがってたぞ」
「は……? 何言ってる……この嘘つき……」
…………。はぁ?
「嘘じゃねぇよ。お前がいねぇと夜眠れねぇって本人が言ってたんだからな」
「嘘つき! 真理のこといらないって言ったのは、お姉ちゃんのほうだもん!!」
「はぁ!?」
ど、どういう意味だ……?
「一緒に遊ぼうって言っても、忙しいから無理とか、用事があるからまた今度ねとか! 一緒に寝ようって言っても、せまいからダメとか寝相悪いからダメとか言うし! 最近のお姉ちゃん冷たいんだもん!!」
えっ……なんか話が違うな……。
「真理はお姉ちゃんともっと一緒にいたいのにっ……ウッウッ……;」
「よしよし……マリマリは可哀相ですね……でも僕がそばにいますからね……」
「モルモルぅ~!;;」
…………。
どういうことだ……?
チビ助を独り立ちさせるための作戦か……?
ならマッケンにも〝甘やかすな〟とか言ってそうなものだが……。
──なんか、裏がありそうだな。
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