再び、取り戻す―(5/26)
※~[凛・トロピカル]視点~※
そして、一週間ほどが経ちました。
今か今かと待ち構えていましたが、結局ママに呼び出されることはありませんでした。
まあ、ママも何かと忙しい身でしょうし、私なんかに構っている暇がないのかもしれませんが、あの鬼教師が本当はチクっていなかったのではないかという可能性もあると思って、淡い期待を抱いています。
あれからというもの、私は変わらず深夜勉強を続けていますが、授業中に眠たくなった時はシャーペンを腕に突き立てたりしてなんとか耐えています。
その代わり、昼食を早めに切り上げてお昼寝をし、夜だけに集中して勉強をしています。
しかし、それも限界が見えてきたようで、昨日は夕方から爆睡してしまいました。
久しぶりに長時間寝たのに、何故か逆に、朝から気分が悪いです……。
今日も小テストがあるけど、得意な古典でよかった……。
おじいちゃんのお陰で国語系は復習してなくてもイケるだろう……。
「うっ……吐き気が……;」
あぁ……朝食食べないほうがよかったかな……;
でも食べないとスタミナつかないし……。
くそぉ……近々中間テストなんてなかったら、もっとペースを落としてできるのにぃ……。
「トロちゃん、なんか顔色悪いけど大丈夫? マッケンよりも死にそうよ」
食堂から教室に向かう途中、ナルシーさんが声をかけてきました。
「オッケーオッケー……異常アリマセ~ン……;」
早く椅子に座りたい……。
「ならいいけど、また授業中に寝たりしないでよね。トロちゃんが先生に怒られると、隣にいる富士子まで被害を被るんだから」
「ハーイ……アイアイサー……」
そういえば、どの先生も何故ナルシーさんの盗み食いにはあまり気づかないんだろう……明らかにモグモグしてるのに……。
──そして経ったか経って、2限目がやってまいりました。
古典の授業です。
一限目は理科で化学の実験をしたのですが、マッケンさんが謎の薬を調合して、それをカスさんが爆発させたりしていたので居眠りをすることはなかったです。
まったく、相変わらず騒がしい人達だ。
「──よぉ~し! 今日は告知通り、小テストを実施するぞ! 皆のもの、用意はできているか!?」
「「「「「「「…………」」」」」」」
「返事をしろ!!」
国語系の担当はおじいちゃんです。
おじいちゃんは教員の中でも特に嫌われているらしく、皆さん大抵無視をします。
「おい!! 聞いているのか凛!!」
こっちを見ないでください。
困った時のお助け船じゃないんですよ私は。
「まったく、無愛想な奴らばっかりじゃな! まあよいわ! このテストで全員どん底に落としたる!!」
おじいちゃんも怖いこと言うようになったなぁ。
昔からあんなんだっけ?
「いいか! ワシは満点以外は認めんからな! 全員が満点取れるまでやり続けるからな!」
そんなこと言われたら、ちょっと不安になる……。
でも大丈夫大丈夫。
おじいちゃんが作る問題なんて予想できる。
「いくぞ! よぉ~い……………………………………始め!!!!」
溜めが長いわ。
「……よしよし、イケるイケる……」
思った通り、問題は難なく解答できるものばかりでした。
久しぶりにシャーペンがスイスイです。
あと7問……。
6問……。
5問……。
4問……。
──ん? あれ?
なんか……文字がぼやけてきたような……。
──Σハッ!!
これはもしや……。
まさかまさかの……。
デジャヴ!?!?;;
「…………;;」
ちょっと待って!!!!;;
あともうちょっと!!
あともうちょっとなのに!!
目がチカチカするし頭が重くなってきた!!;;
文字がうまく書けないっ……!!;;
「……うそっ……;;」
なんか、この間のやつよりも酷い気が……;;
運動してたわけでもないのに、何故っ……!?;
「……だ……だめ……だ……;」
──ゴンッ。
私は机に頭をぶつけてうつ伏せになりました。
「……ん? おい凛! 誰が寝てもいいと言った!!」
寝てるわけじゃないですよ……。
「ちょっとトロちゃん!! 約束が違うじゃないっ!!」
テスト中くらい盗み食いはやめましょうよ……。
「レイたん! ハァハァ……♪」
隙を見てレイたんに欲情するな変態ピーラー!!
「…………。おい。まさか、また貧血か……?」
さすが隼人さん!
その通りです!
「Σえっ!? 大丈夫かい凛くん!!」
だから〝くん〟づけはやめてくださいってばお兄さん……。
「あの……先ほど新薬ができたのですが……いりますか……?」
いらんっ!!!!
私を爆発させる気ですかっ!!!!
「なんじゃ、また貧血か。そんなか弱い人間に育てた覚えはないぞ!!」
すみません……。
「じゃが、不調続きなのは心配じゃ! 誰か保健室に連れていってやれ!」
「だ、だだだ大丈夫ですっ!!!!」
保健室にだけは行きたくない!!
「病人はおとなしく従うんじゃ!」
「大丈夫ですって!!」
私は勢いよく立ち上がりました。
「ほら! こんなにげん──Σ」
しかし、足元がフラついて、倒れそうになったところをおじいちゃんに支えられました。
「ほーれ、言わんこっちゃない」
「…………」
そ、そんな……。
ここまで頑張ってきたのに……こんなところで……。
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