そして、甦る―(34/34)
──ヘンテコ人間。
それは、脳に異常があるわけではないが、様々な意味で精神的に度が過ぎている人のこと。
異常に明るい人。
異常に暗い人。
異常にカッコつける人。
異常に可愛い子ぶる人。
頭の中ではわかっていても、自由を求めて周りの歩調を無視している人。
そういった、将来的に社会で浮いてしまうであろう人を、子供のうちに更生させようという考えから生まれたのが、H☆H高校。
――私は、そんな学校に入学した。
面白そうだから。学歴は関係ないから。
ただそれだけの理由で。
……でも、本当は違った。
これは偶然じゃない。必然でもない。
私の知らないところで、私を想ってくれていた人達が紡いでくれた、めぐりあわせ。
私の心は、常に誰かと繋がっていた。
ただ、忘れていただけ。
ただ、気づかなかっただけ。
私は導かれ、それを思い出すことができた。
そこに触れることができた。
また、大切なものを取り戻すことができた。
そして、新しい何かを手に入れることができた。
私は、みんなに感謝したい。
両親にも、おじいちゃんにも、正生徒会の人達にも、クラスメイトの人達にも、そして、あの人にも。
私を支えてくれて、
ありがとう。
私を見守ってくれて、
ありがとう。
私と一緒にいてくれて、
ありがとう。
私を忘れないでいてくれて、
ありがとう。
いっぱい、いっぱい、感謝したい。
私がヘンテコ人間ではないと知られた今、本当のヘンテコ人間である人達に受け入れてもらえるかわからないけど、きっと、大丈夫。
そんな細かいことは気にしないって、迎え入れてくれるはず。
それは、入学から今日までの、一緒に過ごした日々が教えてくれる。
まだ付き合いは短いけど、ヘンテコ人間は、本当は優しい人ばかりだって、知ったから。
彼らは、病気なんかじゃない、頭がおかしいわけでもない。
ただ、自分に正直なだけ。
私達よりも、しっかりとした意志を持っている。
それを、もっと多くの人に知ってもらいたい。
──自分勝手な人は嫌い。
そういう人はいるかもしれないけど……でも、〝嫌い〟じゃなくて、〝苦手〟だと言い換えるだけでも、何かが変わる。
ただ拒絶するだけでなく、理解してあげようとすることが大切。
だって、自分らしくあることは、悪いことじゃないから。
人にはそれぞれ個性があって、良いところと悪いところがあるから。
だから、相性が合わなかったり、意見が食い違ったりするのは当然のこと。
それをどれだけ許容できるかが、重要なことなんだと思う。
みんな、それをわかっていても、形にできないだけなのかもしれない。
でもそうだとしたら、あと必要なのは、勇気だけ。
みんなと違っていてもいい。
自分は自分らしくありたい。
そういう気持ちを持って、一歩踏み出さないと。
みんなやらないから、自分もやらない。
それは、仲間意識が強いわけではなく、心が弱いだけ。
〝嫌い〟を〝苦手〟に換えて、拒絶していた自分の心を変えられたら、それだけで人は一回りも二回りも大きくなれる。
もしかしたら、嫌いだと思っていたものが、克服できて、好きになれるかもしれない。
今よりもっと、自分のことも、好きになれるかもしれない。
──私は、そうなりたい。
これからこの学校で、もっとたくさんのことを知って、この学校でしか学べないことを吸収して、心を成長させたい。
より多くの人を好きになって、自分のことも好きになって、ずっとずっと、笑顔でいたい。
毎日を、楽しく暮らしたい。
──それが、私の夢。
私はこの高校で、みんなと支え合いながら、この夢を膨らませて、育てていきたい。
みんなにも、この夢を分けてあげたい。
この学校は、私を変えてくれる。
世界に、大切なことを教えてくれる。
──だから、私は叫んだ──。
「「「ハジけろ! H☆H高校!」」」
完
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