そして、甦る―(21/34)


明るくて、


素直で、


いつも笑顔。


誰に対しても愛想がいい、元気な女の子。


――それが、私に対するご近所での評判だった。


学校でも友達がたくさんいて、いつもみんなに囲まれていて、クラスの取りまとめ役として、先生から学級委員長に指名されたりもした。

いじめられている子を助けたり、孤立している子に声をかけたり、そういうことにも積極的だった。


すべては、親がいない寂しさを紛らすため。

周りにその寂しさを悟られないため。

おじいちゃんに、気を遣わせないため。


おじいちゃんは、私を何不自由なく育ててくれた。

ちょっと変態的な発言は多かったけど、無理やり道場に入門させたりすることもなかったし、〝遊びたい時には遊べ〟と言って、自由にさせてくれた。


だから、自分の周りに笑顔を増やして、その中にいる自分も幸せだと、おじいちゃんにアピールしたかった。

それが、無意識のうちにしていたことだった。


でも、毎日が楽しかったのは、本当。

作り笑いをするまでもなく笑顔になれたのは、本当。


本当の本当。

それが、私の本当。

本当の私。


小学4年生までの、私。

記憶喪失になるまでの、私。








あの事件が起こるまでの、私──。


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