そして、甦る―(18/34)
※~[凛・トロピカル]視点~※
「そうですか……それは失礼しました……」
世の中にはいろんな人がいるんだなぁ……あー怖い怖い。
怖くていろんな意味でヒいちゃった。
「わかったらおとなしく死んでろ」
赤毛はこちらに向かって駆けてきます。
しかし……。
『──待ちなさい』
突如響いた澄まし声に、ふと足を止めました。
「……なんだテメェ」
男がギロリと睨むその先に立っていたのは、H☆H高校のお仕置き魔人、
「さっきからやりたい放題言いたい放題ね。せっかく五体満足に生まれてきたのだから、もう少しマシな生き方をしたらどう?」
「あぁ!? テメェには関係ねぇだろうが!! 教師が今さらでしゃばってくんじゃねぇよ!!」
我が校代表のエロティック先生になんという口の悪さ。
ヘンテコ人間だって先生の言うことには渋々従うんだぞ。
「あら残念。私は教師じゃないのよ」
「は?」
は?
ちょっ、私までアホ面になっちゃったじゃないですか。
いくらこんな状況だからといっても、その嘘はすぐにバレちゃう嘘ですよ。
それに、嘘つきにはお仕置きが必要だって言っているのは先生じゃないですか。
一体どんなお仕置きを受けてくださるのですかフフフ。
「──私は、この学校の理事長。この学校には保健医がいないから、普段はその代わりとして保健室にいるけど、その手の免許なんて持ってないわ」
「理事長……?」
あぁ、不良くんは理事長が何かを知らないんだな。
ハハハ、私が説明してあげよう。
理事長というのは学校長よりも偉い人であってだなってエェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェエェェェエエエェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェエエェェェェェエエエエェェェェェェェェェェェェェッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
「理事長であり、仮の保健医であり、そしてこの学校を創設した人間でもあるわ。H☆H高校は私が建てたの。──どう? これでも私を無視できる?」
「…………」
な。
なななななななななななななななななななななななななななななななななななななな
ナナナナナナナナナナナナナナナナナナナナナナナナナナナナナナナナナナナナナナ
nanananananananananananananananananananananananananananananananananana
なななななななななななななななななななななななななななななななななななななな
ナナナナナナナナナナナナナナナナナナナナナナナナナナナナナナナナナナナナナナ
nanananananananananananananananananananananananananananananananananana
naんデースとぉぉぉぉ!?!?!?!?
「ゆ、百合花先生が理事長!?!? う、嘘っ!! えっ嘘!? マジですかぁ!? ホントですか!? ドッキリですかぁ!?!?」
さすがリアクションの桃さん。
私も内心では同じくらい驚いていますよ。
「嘘でもドッキリでもないわよ。──ねぇ王ちゃん。ママ、嘘なんてついてないわよね?」
「Σえっ! え、えぇっと……;; 嘘じゃないけど……」
ま。
まままままままままままままままままままままままままままままままままままままま
ママママママママママママママママママママママママママママママママママママママ
mamamamamamamamamamamamamamamamamamamamamamamamamamamama
まままままままままままままままままままままままままままままままままままままま
ママママママママママママママママママママママママママママママママママママママ
mamamamamamamamamamamamamamamamamamamamamamamamamamamama
mamaデスとぉぉぉぉぉ!?!?!?!?!?
「そそそ、そうなんだ……。信じられないけど……会長が言うんなら……本当なんだよね……」
えぇ!?
mamaのところにはツッコミなし!?
っていうか私以外驚いてる気配ないんですけど!!
「そういうことだから、ね♪」
可愛く言ってもダメですから!
「そうか……そういうことなら話は早い。俺はお前を許さねぇ……俺達の居場所を奪ったお前を……!」
「居場所が欲しいのなら親のもとへお帰りなさい」
「そんなもん要らねぇよ!!」
でも妹は要る。
「なら、真面目に働いて、結婚して、自分の所帯を持てばいいじゃない。どうして、お先真っ暗な世界で居場所を作ろうとするの? 当たり前のように法を破ったり他人を恐喝したりするのがそんなに楽しい? 働かずにお金をせしめたりするのがそんなに心地いい?」
「めんどくせぇんだよ……大人が勝手に決めつけた社会のルールってのに従うのがよ! どいつもこいつも、常識とか非常識とかうるせぇんだよ!」
あぁ、そうか……この人もヘンテコ人間とそう変わらないのか……。
「その分、俺の組では俺のやり方ですべてが決まる。こいつらも、それを承知の上で俺の下にいる。俺は一から社会を作り上げただけだ。それの何が悪い」
「そうね、そういうやり方もあるでしょうけど、あなた達の場合、周りに迷惑をかけているからいい目で見られないのよ。ワガママが通じない一般社会から逃げるのは自由だけど、それならそれで、こっちの領域を踏み荒らすのはやめてちょうだい」
「俺は自由に生きてるだけだ!! 自由にやりたいことだけやって、人生楽しんでるだけだ!! なんのやる気もなく時間にだらだら流されてるだけの野郎どもよりはマシだろうが!!」
「…………」
百合花先生は、しばし口を閉ざしました。
反論ができない、というよりも、何か考え込んでいるように見えます。
「……私も……。私も昔はそう思っていたわ。いえ……今でも、この学校の生徒達を見ていたらその考えを捨てきれない……。一人一人が自由奔放で、頑固で、ワガママで……でも、そういうところが可愛くて、子供達が笑顔でいられるのなら、無理に矯正をさせる必要なんてないと思うの。──でもね……」
先生は、悲痛を滲ませて顔をしかめました。
「それではダメなの。好き勝手で独断的な行動……それで得をするのはその人自身だけだけど、損をするのは、その周りで支えてくれている人達よ。大人になっても好き勝手ができるのは、そういう人達がいるから。人は独りで生きているわけではないことを、ちゃんと自覚する必要があるわ。自覚を持たない友人を持って、少なくとも私は傷ついた」
え……?
先生、ヘンテコ人間の友達がいたんだ……。
「はっ、そんなこと知るかよ! 傷つきたくねぇんなら、関わんなきゃいいだけの話だろうが!」
「私はあの二人なら変わってくれると信じていた。信じていたからこそ、私は二人に……」
「──百合花、もうよすんじゃ。バカには何を言っても効かぬ」
ん?
おじいちゃん、今、先生のこと呼び捨てにした?
馴れ馴れしいぞ!
「ですが……」
「バカにつける薬はない。あるとすれば武力行使じゃ」
「あぁ? 動けねぇジジイが何ほざいてんだよ!!」
喧嘩売るの好きだなじっちゃん。
いつものことだけど。
私は危険を察知して、おじいちゃんのもとへ走り出します。
しかし、それよりも素早い動きをみせた百合花先生が、ヒールをカツッと鳴らし、赤毛の前に立ちはだかりました。
「そうね。言葉で言いくるめられる相手なら、ここまで苦労しないものね」
「邪魔だババア!」
「口が悪いわ。あなた、うちの学校に入れば、その言葉遣いも曲がった根性も叩き直してあげるけど、どうかしら?」
先生は、とってもとっても可愛らしい笑顔で勧誘しました。
え? みんなが震えてる?
武者震いですけど何か?
「叩き直すぅ? んなことできるとでも思ってんのかよっ! ゴラァ!!」
赤毛は先生に殴りかかりました。
危ない! と思った、次の瞬間。
「Σいででででで!!!!!」
先生は、赤毛の腕を捻り上げていました。
「逆に、できない理由なんてないと思うのだけど?」
ん? これは夢デスカ?
「て、てめぇ……!! 女だからって手を抜いてりゃ……!」
赤毛は一旦下がり、レッツ・リトライ。
まるで映画の格闘シーンのような、ジャッキー・チェンさながらの目まぐるしい動きで張り合っていましたが、余裕の笑みをみせた百合花先生に一本取られ、赤毛のアンちゃんは地に平伏しました。
「うっ……!!」
「あら、女相手に本気でその程度? まあ、まだ甘ちゃんだものね」
な、なんと恐ろしい微笑み……。
息子らしき会長さんも恐がっていますよ。
「く……く、そっ……この俺がっ……女に負ける……とはっ……。──ガクッ」
い、逝っちゃった……。
私があんなに苦労しても歯が立たなかったのに……百合花先生、ただのお仕置き美魔女じゃなかったんですね……。
「女だからって、見くびらないでほしいわ」
ごもっとも!
あなたは女性の星だ! 鑑だ!
と、それはさておき。
「え、えっと……これで、一件落着……?」
「みたいだな……」
会長さんとカスさんは、お互いの顔を見合って、安堵の息を漏らしました。
正生徒会と極悪生徒会、今回もなんとか、勝利を収めることができました。
全員活躍したかどうかは……まあ置いといて。
幸いにも、命に別状があるような人はいなかったようですし、よかったです。
さてさて、では私は、ラブコールを送るおじいちゃんを無視して、寝言で「肉肉肉」と唱えているナルシーさんでも助けに行きま──
「キャアァァァァァッッ!!!!!!!!」
「「「「「「「「!?!?!?」」」」」」」」
えっ……!?
今の悲鳴は……!?
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