魚群、現る―(12/13)


──で、バスに乗り込んだわけなんですが。


「オイ! 押すんじゃねぇよっこのデカエラ野郎!!」


「誰がデカエラですのっ!!」


「どこ触ってんのよこの変態!!」


「俺っち幸せアヒャアァァ!!!!」


「アタタタタタタタタ!!!!!!」


「モモモモモモモモモ!!!!!!」


「もう一度爆発を……」


「やらせないよ!!」


「……zzZ」


何故タクシーにしなかったんだ。

バスだったら追い詰められるのがオチではないか。

しかも滅茶苦茶ぎゅうぎゅうだし!


「チョット、ソコノ二人~暴レナイデ~クダサーイ」


「アタタタタタタタタ!!!!!!」


「モモモモモモモモモ!!!!!!」


聞いてねぇし。


「ピーチサン、モット~ソチラニ行ッテクダサーイ」


グイグイ。


「えっ、ちょっと!! そんなに押されたら会長に……!!」


えぇ、わかっていますよ。

引っつけグイグイ。


「わわわっ//!! ご、ごめんなさい会長っ//!!」


「ううん、大丈夫だよ」


当然ながら嬉しそうですねピーチさん。

でも鼻血は噴かないでくださいよ。


「アタタタタタタタタ!!!!!!」


あのオタク一人でもうるさいな。


「キャー//!! キャー//!! 恥ずかしいキャー///!!」


どのみちうるさいなピーチさんも。


『──お客さん、お静かに願います』


やっぱり怒られた。


「ご、ごごっ、ごめんなさい//!!」


別にピーチさんだけが悪いわけじゃないんですけどね。


「このエラバリバリバリバリバリエーションッッ!!!!」


「刺し殺しますわよこのカスカスカスカスカスタネットッッ!!!!」


『お客さん!?』


うるさくてすみません。


「痴漢よぉぉぉ!!!!!!」


「グヘヘブヘヘアキャキャ!!!!」


『ちょっ、お客さん!!!?』


誰かあいつを捕まえるんだ!!


「アタタタタタ肩タタタタ!!!!」


「痛イ痛イピーラーサン痛イデ~ス!!」


『お客さんっ!!!!!』


私の肩を殴らないで!!


「会長に触れちゃったキャワワワアァァァァァァ////!!!!!」


「しっかりするんだ桃子くぅぅぅぅぅんっっ!!!!!!」


『お客さぁぁぁんっ!!!!!!!!』


なんか視界が赤くなったぜぇ!!!!


「ファイアァァァァァアァァァァァァァスティィィィィィィィックッ!!!!!!!!!!!!」


『降りろぉぉぉぉっ!!!!!!!!』




はい、デジャヴ。




──そのあとは、みんな仲良く歩いて帰りました。


「テメェが弓矢ブッ放すから追い出されたじゃねぇか!!!!」


「あなたがマッチを燃やすからですわ!!」


どっちもどっちです。

っていうかカスさん、ギザ10見つけたんですね。


「もっとしっかりおぶりなさい!!」


「ね、願ってもない幸せだっ!!♪」


ナルシーさん、お菓子を食べて増量中。


「ぼ、僕はもうダメだよ……パトラッシュ……」


「天使は撮影可能でしょうか……」


殴られた仕返しとしてピーラーさんの鳩尾を仕留めてやりました。


「うっうっ……本当にごめんなさい……;;」


「大丈夫だよ、私服なんてめったに着る機会ないからさ」


ピーチさんは最後の最後で盛大に噴いてしまいました。

会長さんに向かって。


「疲レマシタネ~」


「…………zzZ」


あぁ、守護神さんは寝ながら歩いているのか。


「せっかくの骨休めが台なしですわ!」


「お前らだけいい思いしようとした罰だ!」


「羨ましかったらまともな人間になりなさい!」


「そんなもんクソくらえだ!!」


正直、カスさんは変わらないと思います。

伊達に問題児ナンバーワンやってませんから。


「ならばこの学校から出てお行きなさい!」


「嫌だ!!」


そういえば、カスさんは自分の意思でH☆H高校に来たのかな?

退学したいとか思ったことないのかな?


「俺はH☆H高校の王者になって生徒全員を下僕にするんだ!!」


なさそうですね。


「そんなこと許しませんわ! あなたは黙って学校側に従っていればよいのです!!」


「はんっ! また逃げ出してやるし!!」


「させません!!」


もう当分はやめておきましょうよ。

ほらほら、もう学校に着きますから。

ま、逃げようと思えば逃げられるかもしれませんが、私達には牢獄がお似合いなんです。


あ、警備員さんが誰もいませんね。

説教されているのでしょうか。


……ん?

でも、校門の前に誰か立ってる?

あの白衣には……見覚えが……。


「──あら、揃いも揃ってお帰りなさい♪」


保健室の美人ティーチャーこと、如月百合花先生です。


「げっ!!」


カスさんはマッケンさんの後ろに隠れました。


「どうしたのカス?」


熱血さんにおんぶされているナルシーさんが不思議そうに訊ねます。

あ、熱血さんが潰れそうになってる。


「が・ま・ん!!」


頑張ってください。


「……お、俺はヤツが苦手だっ……」


「へー、意外ね」


んーまあ、気持ちはわかりますけどね。

きっと私達が見ていないところでお仕置きでもされたんですね。


「帰りが遅くなり、申し訳ございません。貴重な休暇をありがとうございました」


「いいのよ。私も暇だから」


正生徒会の不在中はこの人が生徒の面倒見てたんだ。

大丈夫だったのかな。

なんか大丈夫そう。


「それにしても、あなた達の格好……楽しそうね」


潜水士と自衛官に、ロリータとオタク。

ピンクウーマンと真っ黒クロスケに……あ、よく見たら熱血さん、巨人のTシャツに阪神の半ズボンはいてる。


「あら? その赤いものは……血?」


百合花先生は、会長さんにツカツカと歩み寄りました。

会長さんは一瞬表情が強張ります。


「あ、は、はい……」


「どうしたの?」


「ご、ごめんなさい!! 私が……鼻血を噴いてしまって……か、会長の服に……!」


ピーチさんは頭を下げて必死に謝罪します。


「いいんだよ桃子くん。仕方がなかったんだから」


会長さんはニコリと微笑みました。


「うぅ……ごめんなさい……」


ピーチさんは今にも泣き出しそうになっています。


「そう……ならいいわ。もうお鼻は大丈夫?」


「は、はい! バッチリです!」


その表現はちょっと変。


「なら、王子くんは今から保健室にいらっしゃい。その服を洗ってあげるわ」


「えっ!? だ、大丈夫です!! 自分でできますっ!!」


何故だろう……会長さんが怯えているように見える。


「血液は普通に洗っても綺麗に落ちないのよ。私は仕事柄、慣れているから。……ね?♪」


「え……あ……は、はい……;;」


先生の眼こわっ!!

らんらんと光ってる!!


「あなた達脱獄犯の処遇はそれから決めるわ。私の気分次第では、キツ~いお仕置きになるかもしれないから、覚悟しておくのよ♪」


「「「ひぃっ!」」」


ああそっか。

夏休み期間中も他の先生はいないから、チクるも秘密にするも、事態を知ってるこの

先生の自由なんだ。

今さらながら、怖くなってきました。


「ふふ、楽しみだわ♪ それじゃあ行きましょう、お・う・じ・くん♪」


「……はい……」


先生と会長さんは、仲良く(?)校舎のほうへ歩いていきました。


「……あいつ、死んだな;;」


カスさんはマッケンさんの後ろで哀れみました。


「きっと針山地獄に遭うのよ!! いやぁー!! 富士子は舌抜かれちゃうぅぅぅ!!!! 何も食べられなくなっちゃうぅぅぅ!!!!」


閻魔大王じゃあるまいし。


「僕のフィギュアがっ……僕のフィギュアがぁぁぁ!!!!!!」


没収される可能性はありますね。


「僕は何をされても……準備万端です……」


どういう意味!?


「うっうっ……会長っ……」


泣かないでくださいよピーチさん。

っていうかなんで泣いてるんですか。

鼻血ブーしたから?

会長さんが恐ろしい目に遭うから?


ってちょっと待って。

なんで会長さんがお仕置きされる前提になっているんだ。

会長さんは何も悪くないのでは?

私の知らないところで何かやらかしたのかな?


気になる……キラーン☆


「──ヘイヘイ、ピーチサン」


「ピーチじゃなくて桃子!!」


はいはい、声は小さめでお願いします。


「会長サン、気ニナ~ル?」


「え?」


「コッソリ、覗キニ行キマスカ~?」


「へっ!?」


「行キマスカ~?」


「へっ!?!?」


答えろよ。


「行クデスネ~デハ行クデ~ス」


「えっ!? ちょ、ちょっと!!!?」


「ピーチサン、オ借リシマ~ス」


「どうぞご勝手に」


「世麗奈冷たっ!!」


確かに今のは他人ごと過ぎる一言。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る