第4節【脱走脱獄】

魚群、現る―(1/13)


「──今日集まってもらったのは他でもない」


「「「「…………」」」」


「我らは大変に時間を無駄にしている。いや、させられている」


「「「「…………」」」」


「学校に監禁された高校生活なんて、健全な人間のやることではない」


「「「「…………」」」」



「なぁ! そう思うだろう!!!?」


「「「オォォォォォーッ!!!!!」」」


オォー!!


──って、何言ってるんですか。


「チョット~。突然ドーシタノデスカ~カスサン」


「突然じゃねぇよトロ!! 俺はずっと前から不満に思っていた!! 入学した瞬間から思っていた!! 入学する前から思っていた!!」


どっちやねん。


「なんで俺達は外出禁止なんだ!! 今は夏休みだぞっ!! 華の夏休みだぞっ!! 元気に昆虫採集したり海へ行ったりしたいだろ!!」


いえ、まったく。


「肝試しとかやりたいだろ!!」


ここでもできますよ。


「賽銭箱荒らしに行ったりしたいだろ!!」


それ泥棒だから!


「現金ですかぁぁぁぁぁ!!!!」


現金ですよぉー!


「おいカス、朝っぱらからデケェ声出すなよ」


「おーすまんすまん」


オッサンですかぁー!


「富士子、スイーツ食べ放題のお店に行きたい!! 新しいとこできたの知ってるんだから!!」


ナルシーさんが行ったら即超赤字になりますよそこ。


「……僕は……別にどちらでも……」


あれ、さっき一緒に「オォー!」って言ってたじゃないですか。

まあ、なんだかんだマッケンさんは充実した生活を送っていそうですもんね。


「無欲だなマッケン。僕は夏コミに行きたいぜぇぇぇえええぇぇぇぇぇ!!!!!!」


ちょ、ピーラーさんが一番うるさい。


「俺達は青春を謳歌するために自由の翼を得なければならない! 壁を越えなければならない!! そして羽ばたくんだ!! それこそが俺達のあるべき姿だぁぁぁ!!」


「「「ダァァァー!!!!」」」


「スリー・ツー・ワンダー!!」


「「「スリー・ツー・ワンダー!!」」」


「ヒー・ヒー・フゥだー!!」


「「「ヒー・ヒー・フゥだー!!」」」


「赤・ちゃん・産んだー!!!!」


「「「赤・ちゃん・産んだー!!!!」」」


えっ、何言ってんの!?


「──ってなわけで、敵のアジトに殴り込みまーす」


「「「まーす」」」


どんなわけだ!

……とか言ってる私達は今、校舎四階の空き教室にいます。

勝手に〝極悪生徒会〟のプレートをつけて占領しちゃいました。

私が言うのもなんですが、夏休みの時くらい校舎は閉鎖したほうがいいと思います。


「マッケン、用意はできてるか!?」


「バッチコイです……」


またマッケンさんが活躍するんですか。

今回はどんな発明が飛び出てくるのでしょうか。


「テレレレッテレーン……──万能てんとう虫ー……」


∑ドラ◯もん!?


「おぉ! どんなてんとう虫なんだ!?」


マッケンさんはごそごそと懐から何かを取り出しました。


「この擬似てんとう虫は……以前の小型ヘリの縮小版です……。これなら気づかれずに盗撮盗聴ができます……」


犯罪だ。


「す、すげぇ!!!! やっぱりマッケンは神だな!! お前みたいなダチができて俺は幸せだぜ!!」


「いえ、所詮ただのクラスメイトですから……」


ん? 今のは謙遜か?


「美味しそうなてんとう虫ね! まるでコンペイトウだわ!」


似てない似てない。


「それがあれば女の子達の部屋を覗き放題! ヤッハー!!」


ほらこんな人が出てくる始末。


「……トロさんは……?」


「エ?」


「トロさんのご感想は……?」


感想ほしいんだ。


「ンー……。フツーニ、スゴイト思イマスヨ~」


「……トロさんの感想センスはゼロっと……」


メモるな!!


「ッテユーカ、殴リ込ムノデハ~?」


「いきなりそんなことしたら確たる証拠が掴めねぇだろ!」


「確タル証拠~?」


「奴らがどれだけ楽しいサマーバケーションを計画してるのか調べんだよ! 普通に聞いたらぜってーに答えねぇだろうからな! 俺達みたいなのがいるが故に!」


カスさん自覚してるんだ。

自分がクレーマーだってこと。

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