正生徒会、現る―(2/11)


──で、体育館にやってきました。

カスさんとピーラーさんの食器は私が片づけました。

誰も手伝ってくれませんでした。

マッケンさんも手伝ってくれませんでした。

優しい人だと思っていたのは私だけだったようで、やっぱりマッケンさんも利己的なヘンテコ人間なんだな~と思いました。


「只今より、H☆H高校、第一回全校集会を始めます。一同、礼」


その号令通りに礼をしたのは全生徒の4分の1くらいです。

ふと思ったのですが、ここにいる人達は、この高校が、生徒の更生を目的としている高校だということを理解しているのでしょうか。

理解しているのなら、礼くらいはしてもいいと思います。


正生徒会せいせいとかい、挨拶」


さすがに昨日の今日で校長先生は出てきませんね。

あの爆発、大丈夫だったのかな?


…………ん?

ちょっと待って。

セイセイトカイ、ってなんだ?


「皆さん、おはようございます。正生徒会会長、玉野王子たまのおうじです」


あぁ、生徒会?

そんなのいたんだ。

っていうか……会長さん、普通の人?


「僕達正生徒会は、通称〝ヘンテコ人間〟と呼ばれている皆さんのサポーターとして、学校生活から日常生活までを支援させていただく団体です」


うわぁ、ヘンテコ人間ズの目つきがVai! Ya! Vai!

明らかに嫌悪感抱いてるし。


カスさんは立ったまま寝てるけど。


「今後、僕達も皆さんから学ばせていただくことは多いと思います。どうぞ、よろしくお願いいたします」


よろしくお願いされても無理な気がする。

周囲が殺気立っていますよ。


「では、他のメンバーも紹介いたします」


なんだあの微笑みは。

ウザそうだけど憎めない顔してやがるぜ会長さん。


「正生徒会副会長、盛利桃子さかりももこ


「さ、盛利桃子ですっ! 担当はA組です! よろしくお願いします!!」


会長さんの隣にいた女の子が頭を下げます。

緊張でガチガチしてるな。

両耳の下辺りで結ったツインが可愛らしいです。


……ん?

担当ってなんだ?


「その隣、正生徒会書記、杉田青春すぎたまさはる


「C組担当、杉田青春だ!! みんな、よろしくな!!☆」


ああ、熱血漢だ。

最近では珍しいタイプだな。


「そして、一番端の彼女が、正生徒会会計、江良世麗奈えらせれな


「江良世麗奈です。担当はD組ですわ。以後お見知りおきを」


お嬢!!

お嬢だ!!

縦巻きロールだ!!


「諸事情によりここにはいませんが、正生徒会にはもう一人、E組担当の者がいます。紹介はまた後ほど」


なんでいないんだよー。


「ちなみに、僕はB組担当です。担当というのは、そのクラスの監督・統括役という意味です。と言いましても、常に同じ場にいるわけではありませんので、あしからず」


それって監督の役目できてる?

ま、いいですけど。


「ご用がある方はお気軽に正生徒会室へどうぞ。ご相談なども随時受け付けております」


きっと誰も行かないでしょう。


「それでは、僕達からは以上です」


外部の人達ですか……ヘンテコ人間をお世話するために来たなんて偉い偉い。


「──以上を持ちまして、第一回全校集会を終わります。一同、礼」


早っ!!

もう終わり!?

正生徒会の人が挨拶しただけじゃん!!

驚きで私も礼できなかったよ!


「何あいつら!! 超ムカつく!!」


ナルシーさん、憤っております。


「マジあり得ねぇ!! この学校に普通の高校生なんかいれんなよ!!」


ハハハハハ。


「僕達の自由を……!」


マッケンさんがキレてる!?


「グー……スー……ピー……」


カスさんはまだ寝てるし。


倒れて頭打っちゃえばいいのに。


「カスサン、起キテクダサ~イ」


ツンツン。

腕をつっついてみる。


「……やんっ……」


変な声出すな。


「あら、トロちゃんてば罪な子」


何が!?

何が!?!?


「でも面白そうね、富士子もやる~♪」


ノってるし。

ナルシーさんもツンツン。


「……にゅふっ……むふふっ……」


気持ち悪い生き物だ。


「おい、僕にもやらせろよ!」


ピーラーさんまで!


「……あはっ……おふぅふぅぅー……」


キモい。


「あは、面白いわね、このカス!」


「もっとやろうぜ!」


ツンツンツンツンツッツクツン。

……やめてください。

気持ち悪い声にこっちが悶え死にしそうです。


「や、やめっ……うっ、んっ……あっ、そ、それ以上はっ……! ──う、わあぁぁあぁぁぁぁ!!!!!!」


最後男声に戻った!!

そして倒れた!!

頭打った!!


「あら、もう終わり?」


「つまんねぇ野郎だな」


この二人、Sか?


「……っ、いってぇ……!!」


覚醒しましたか。


「……ん……?」


カスさん、辺りをキョロキョロと見渡しています。


「ドウカシマシタカ~?」


「カは……?」


カ?

カって、あのカ……?


「……蚊ハ、今ノ季節ニハ居ナイト思イマスガ~」


「嘘だ!! いま大量の蚊が俺を襲ってきて、俺は吸血されて貧血になって倒れたんだ!!」


それ夢でしょ。


「ソレハ、ドリームデ~ス」


あれ?

私、ルー語みたいになってない?


「ゆ、夢!? ──あ……そ、そうか、そうだよな……現実じゃ、あんなハレンチなこと起こるわけねぇよな……」


あなた蚊に刺されたんじゃなかったっけ!?


「──って、んなことはどうでもいい。集会は? どうなった?」


知りたいんなら起きてなさいな。


「ナンカ、正生徒会ッテイウ~人達ノ紹介ダケシテ終ワリマシタ~」


「正生徒会?」


「そうよ! もう超うざい奴らなんだから!!」


「あいつらの存在価値ねぇよ!」


「僕の自由……!」


皆さんそんなに嫌なんだ……。


「へぇ、そんな奴らが……」


カスさん、興味ありげにニヤニヤしています。


「──よし!! こっちもご挨拶といこうか!!」


そうですか、ヤル気ですか。


「えぇ~、あんな奴ら、近づきたくもないわよ!」


「僕はどっちでもいいぜ」


「僕は行きたいです……」


意見バラバラ。


「チョット待ッテクダサイ。早ク教室ニ戻ラナイト、授業ガ始マリマスヨ~」


「挨拶は大事だ!!」


それはそうですが。


「そしてウザい奴らだったら焼き畑にする!!」


やめなさい。


「そういうことなら富士子も行くわ! この学校から追い出しましょ!!」


えぇ~、また問題起こすんですか?


「そうと決まればレッツゴー!!」


その言葉を合図に、私は走り出しました。

もちろん、逃げるためです。


「おいトロ!? 自分だけイイ子ぶる気かよ!!」


そうですよ悪いですか。


「責任転嫁なんてズルいわ!!」


なんの責任ですか。


「僕達を裏切るのか!?」


最初から信用してません。


「に、逃げるのであれば、命令です……! 僕達に、ついて来てください……!」


ピタッ。


「…………」


えっ……そ、そんなっ、ここでその権利を発動させるなんて……!


「ナイスだマッケン!! さあ、敗北者は優勝者に服従しろ!!」


…………。


ぶえ~ん……酷いよ酷いよ;;

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